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2007年01月21日

●第100話(ジャガールクルトについて その2)

読者の方からもっとJ・L(ジャガールクルト)のことを知りたいというメールが届きましたので、更に述べてみます。

日本では圧倒的にROLEXが人気がありますが、時計技術者としてロレックスと比較しても何ら遜色のない、まさしくそれ以上の素晴らしい機械をたゆまず作ってきたスイス時計メーカーにジャガールクルト社があります。ジャガールクルト社は世界最高水準の時計技術を200年近くずーと有した並ぶもののいない時計会社の一つです。
ROLEX・JL・AP・PP等の時計の修理をするときは、職人としてもう最高のルンルン気分なのです。日本でもっともっと沢山売れて欲しいと真から願う腕時計です(人気ばっかり先行して実力が伴わないスイス時計メーカーが沢山ありますが)。

1833年創業以来、取得した特許の総数は数百にものぼります。1890年には何と125種類におよぶムーブメントを製造し、他社の高級時計メーカーにムーブを供給してまいりました。著名な宝飾高級時計メーカーもJ・Lから機械を買って時計を作っていたのです。過言すれば、J・Lが無かったら、ある有名なスイス時計会社も存在しなかったのでは ないでしょうかと言っても過言ではありません。

1903年には、厚さ1,38mmの世界No1の極薄のポケットウォッチを作り、この記録は100年過ぎた今でも未だに破られていません。開発に至難を極める超薄型時計に社運をかけてきたJ・L社は、2,8mmの厚さのクロノグラフ、2,70mmのミニッツリピーターのムーブを開発製造しております。

1953年には世界初のリューズ無しの自動巻時計フューチャーマチックを作り、1982年には世界最小のムーブメント(9,7×11,7mm厚さ1,8mm)を開発しました(どれほど小さいか皆さん想像をしてみて下さい)。

その他にも枚挙に暇がないほど、革新的な時計ムーブを長年に渡り次から次へと製造しております。私見ですが、その点ではハッキリ言ってROLEX・IWC・GPよりも数段上の時計メーカーと言えるかもしれません。

最近、読者の方から買って間もないI社の修理依頼がよく舞い込みますが、30年前のI社の時計には想像も出来なかった現象です。その点、ROLEX・JL社は何十年と変わることなく良心的で、その時その時の最高の機械を作り続けてきた希有な時計メーカーです。

J・Lには特筆すべき点に、独自のマスター・コントロール1000時間という、出荷する前に行う腕時計のテストがあります。マイスター・ウォッチメーカー技師が、6週間(1000時間)に渡り過酷な検査を全てにし続けるのです。これは公認クロノメーターなどと比較が出来ないほど、厳しい1000時間に渡る精度・耐久試験です。これに合格したJ・L腕時計には、ケースバックにシリアルNo入りのゴールド・シールが付けられます。この時計こそ世界の頂点を極める腕時計であると言って過言はないでしょう。時計ファンとして1個は必ず所有したい腕時計です。

"時計の小話(1~100話)"のいままでの記事
第100話(ジャガールクルトについて その2)
第99話(ジャガールクルト・メモボックスについて)
第98話(新参入の時計愛好家)
第97話(第3回時計通信講座のついて)
第96話(目覚まし機能付きセイコー・ベルマチックについて)
第95話(時計旋盤の名人・大川勇先生について)
第94話(オメガの廉価版の名機Cal、601について)
第93話(シチズン・クロノマスターについて)
第92話(スイス時計・モバードについて)
第91話(日本時計師会について)
第90話(鉄道腕時計について)
第89話(時計オークションについて)
第88話(2001年バーゼル・フェアについて)
第87話(滋賀県の近江時計眼鏡宝飾専門学校について)
第86話(時計技術通信講座の受講生の方について)
第85話(ロレックスの修理について)
第84話(スイス時計ブレゲについて)
第83話(ベトナムからの修理依頼について)
第82話(スイス時計タグ・ホイヤーについて)
第81話(スイス時計ブライトリングについて)
第80話(セイコー極薄時計、Cal 6810について)
第79話(ROLEXアンティークについて)
第78話(諏訪セイコーと第二精工舎と精工舎について) 
第77話(グランドセイコーの歴史について その2)
第76話(スイス・ETA社について)
第75話(今週のアンティーク時計について)
第74話(キング・セイコーについて)
第73話(アンティーク・ウォッチの取り扱い開始について)
第72話(機械式クロノグラフのメカについて)
第71話(難物時計の修理について その2)
第70話(時計の覇者・ロレックスについて)
第69話(時計の形而上学的な思考)
第68話(難物時計の修理について)
第67話(時の流れとともに腕時計の人気も浮沈)
第66話(スイス時計 ピアジェについて)
第65話(日本時計技術の恩人・山口隆二先生について)
第64話(スイス時計 バセロン・コンスタンチンについて)
第63話(テンプ(天府・人間の心臓部分)について)
第62話(スイス時計 オーデマ・ピゲについて)
第61話(最近のスイス時計メーカーの動向について)
第60話(時計修理技術の伝承について)
第59話(贋作について)
第58話(ムーブメントの美しさについて)
第57話(スイス時計 ブランパンについて)
第56話(グランドセイコー(機械式)の生産動向について)
第55話(スイス時計メーカー:ユリス・ナルダンについて)
第54話(私見・スイス時計のランク付け)
第53話(スイスの時計産業について)
第52話(スイス時計・エベルについて)
第51話(スイス宝飾腕時計のホール・マークについて)
第50話(パテック・フィリップについて)
第49話(アンティーク・ウオッチ購入のアドバイス)
第48話(公認高級時計師(CMW)試験、復活に向けて)
第47話(スイス高級腕時計の価格について)
第46話(時計旋盤作業について、その2)
第45話(ジャガー・ルクルトについて)
第44話(クロックのムーブメントについて)
第43話(時計職人の要望と期待)
第42話(女性用・機械式腕時計について)
第41話(最近の腕時計の消費動向について)
第40話(ブローバ音叉腕時計・アキュトロンについて)
第39話(水晶時計について)
第38話(スイス時計・ゼニスについて)
第37話(歴史上、最高の天才的時計師・ブレゲについて)
第36話(時計修理料金について)
第35話(スイス時計 インターナショナルIWCについて)
第34話(脱進機について)
第33話(スイス・オメガについて)
第32話(シチズンの機械式腕時計について)
第31話(フランスの天才的時計師について)
第30話(世界の4大高級宝飾時計会社について)
第29話(近代の天才的時計師について)
第28話(時計旋盤作業について) 
第27話(スイス時計メーカー:ジラールペルゴーについて)
第26話(スイスの時計メーカー:ロンジンについて)
第25話(機械式船舶クロノメーターについて)
第24話(米国の時計メーカーについて)
第23話(幻の名機・セイコー製市販天文台クロノメーターについて)
第22話(世界の時計産業について)
第21話(CMW公認高級時計師試験について)
第20話(国家検定時計技術の資格試験について)
第19話(アンティーク腕時計について) 
第18話(国産メーカーについて 4)
第17話(クロックメーカーについて)
第16話(国産メーカーについて 3)
第15話(公式検定・クロノメーターについて)
第14話(国産メーカーについて 2)
第13話(複雑時計腕時計について)
第12話(スイス舶来腕時計について)
第11話(時計油について)
第10話(セイコー創業・服部家について)
第9話(時計職人列伝)
第8話(時計工具について)
第7話(時計職人の育て方、今昔)
第6話(国産メーカーについて 1)
第5話(ロレックス・デイトナ)
第4話(機械の簡単な歴史)
第3話(腕時計の電池交換について)
第2話(スイスのコンクール)
第1話(ロレックス)