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2007年01月21日

●第21話(CMW公認高級時計師試験について)

CMWとは英語で『Certified Master Watchmaker』の略です(英語では時計職人のことを『Watchmaker』と言います。つまり、旋盤(レース)を駆使して天真・巻真等をマイクロメーター、アキシャルマイクロメーターで測定して正確に復元できる技量を持った人を差します)。アメリカの時計技術試験には、CW試験(初級)とCMW試験(高級)があり、後者は世界的に権威のあるものです。

労働省が褒賞する『現代の名工』は多田稔先生・宮脇先生のように、多数のCMWで占められています。昭和29年に米国時計学会日本支部を創立し、第1回のCMW試験が日本で行われ、2名(角野常三先生・末和海先生)の合格者が出ました。それから毎年行われ、毎年20~30名の合格者を輩出し、昭和56年までの27年間に800名の人がCMWの称号を獲得しました。

当初、時計技術指導員(職業訓練指導員)の大多数を占めていたCMWが、国家検定技能試験の受験者の講習を受け持っていましたが、受講生から「1級時計技能士を合格していな いのに」と言う声を聞き、あえて1級時計技能士を受け、満点で合格し、特別知事賞を受賞したCMWは、行方二郎先生・小原精三先生等多数おられます。

CMW試験は時計技術試験の最高峰に位置するもので、学科試験1日・旋盤作業試験(天真・巻真別作)1日・実技試験3日(19セイコー懐中時計・シチズン自動巻腕時計)の延べ5日間にわたり、700点満点で490点以上の者が合格します。特に実技試験は難易度の高いもので、故意に滅茶苦茶に壊されている19セイコー懐中時計 (当時の価格6500円)を天真別作して入れ替え、ヒゲゼンマイが重力誤差を受けないように理想的な内端曲線に理論通り修正し、ヒゲ棒・ドテピンの別作、アンクル爪の調整等をして、クロノメーター規格以上の精度を求めるものでした。

最近のクォーツの普及のためCMW試験は現在中断中ですが、機械時計の復興とともに若き時計技術者が増えてきている今、将来的にはCMW有志を集めて、CMW試験を再開 したいという希望を私は微力ながら持っております。