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2007年01月21日

●第89話(時計オークションについて)

先月、関西の一流会社のビジネスマンから、オークションで購入した無名のトゥールビヨン腕時計(SS側)の修理依頼を受けました。40万円というトゥールビヨン腕時計ではかなり安い品なので飛びついて買ってしまったが、1ヶ月で止まってしまったと言うことでした。SS側のトゥールビヨン腕時計ということで少し懸念がありましたが好奇心もあり、一度送ってもらいました(トゥールビヨンの修理の機会はそうあるものでもないので、贋作品でも直る物なら直してみようと思いました)。

お預かりして中を見てみましたが、一応トゥールビヨン機構にはなっていましたが、機械自体はひどいモノでした。安価なムーブを改造した海賊版で、ガンギ・アンクル等がひどく錆びており、ヒゲゼンマイも何らの調整もしてありませんでした。テンプの重力誤差の補正、以前の問題でヒゲ棒アガキもテンプの振り角によって異なり、滅茶苦茶でした。文字板もネジ止めではなく背着剤で止めてあり、地板もカシメて分解できないようになっていました。デザインはブレゲ・トゥールビヨンに似ていました(海賊版とは言え40万円とは大金ですね。ムーブを見ないで大金を出すのはやっぱり危険です)。

おそらく香港か東南アジアの手先の器用な悪意な時計職人が、善良な市民を騙すために作ったものと想像しております。今では香港製の本当に精巧な偽物が沢山出回っており、注意が必要です。時計の小話で何回となく書いてきましたが、高額なアンティーク腕時計やオークションで高額品を競りおとす場合は、目利きのできる人に中の機械を見てもらい、納得してから購入されることをお薦めします(あとあと後悔しないためにも)。世の中は善良な人々が大多数ですが、中には詐欺師ペテン師がいっぱい落とし穴を作って待ちかまえていることを肝に銘ずべきかと思いました。