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2007年01月21日

●第50話(パテック・フィリップについて)

シドニー五輪女子マラソン金メダリスト、高橋尚子選手が10月30日に国民栄誉賞を贈られました。その副賞にパテック・フィリップ(アクアノート94万円)が高橋選手の希望で授与されました。高橋さんはなかなかの時計通と思われます。この業界に身をおくものとして大変嬉しく思いました。

パテック・フィリップ社はバセロン、オーディマ、ピアジェとともに世界最高峰の工芸的高級時計メーカーの一つで150年の歴史があります。特にパテック・フィリップのムーブメントは、クロノメーター規格よりも更に厳しい精度保証された(ジュネーブ・シール)を受けております。複雑時計を生産出来る高度の技術力や、世界に右に出るものがいないと思われる時計技術者を多数抱えるメーカーでもあります。

スモールセコンドのカラトラバ18石腕時計を、少ないですが何回となく分解掃除をした経験から申しますと、どこを見ても隙のない完璧な仕上げがされていました。どのネジ、バネ一つ見ても美しく磨きが成されていて、ドライバーを持ってネジを弛める時など緊張のあまり手が震える様な感じでした。それほどまでに芸術的な素晴らしい美しさでした。姿勢誤差を完璧に取ってあり、メカ時計としてはこれ以上の精度を求めるのは無理と思えるほど正確な腕時計でした。

いまだかって並の振動数の腕時計ではこれ以上望めないほど5つの姿勢差はなかったのです。当然、巻き上げヒゲゼンマイを採用していました。タイムグラファーでは、見事な5つ(各五つの姿勢、文字板上下・リュウズ上下・左・)の真っ直ぐな線が出ておりました。キャリバー?703357、730906は私にとって鮮明に残る最高の手巻腕時計です。

またパテック・フィリップ社は1950年にジャイロマックステンプを発明し特許を取得して おります。このテンプの出現により緩急針での調節が必要ではなくなり、微調節が8つの錘の移動で簡単に出来るようになったのです。

宝石愛好家は真珠に始まって行き着くところ真珠で終わるともうしますが、腕時計も最後に行き着くところはパテック・フィリップとオーディマピゲの2針手巻腕時計ではないでしょうか。それに関しては異論はほとんどの方にないでしょう。トゥールビヨン、閏年表示機能付き永久カレンダー、パワーリザーブ・インジケター搭載のK18金側懐中時計(Ref969、Cal22TQIRM)は、なんと1億1千万円もいたします。日本で誰か解りませんが1人が持っておられると言う事です。時計師として一度手に持って中の機械を見てみたいものです。そんなチャンスはないでしょうけれど。