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2007年01月21日

●第36話(時計修理料金について)

私が30年ほど前この業界入った頃、国産手巻き腕時計の分解掃除は900円で自動巻は1200円でした。高級舶来品手巻き腕時計は2000円、自動巻は2500円位だったと朧気ながら記憶しております(その頃は、床屋代の3倍が時計修理の適正値段と言われていました)。貨幣の価値が大きく変わったとはいえ、ずいぶん高くなったものだと思います。

その頃はどの時計店でも1日に5~6個、分解修理の依頼がきていたのではないでしょうか。修理の稼ぎだけで一家が飯を食えたもので、時計屋は腕を他店より磨く(昔は分解掃除の事を磨きと言っておりました)事に躍起になったものです。

メーカーも新製品を出す度にその時計の技術講習会を全国各地で開催し、時計屋の技術力に一目おいていたのも事実だと思います。しかしクォーツ腕時計が登場して以来、修理がほとんどなくなり、技術水準を維持する事なく脱落していった時計店はいっぱいあるのではないでしょうか。今日では、自店でどんな腕時計でも自信を持って修理できる店はほとんどないのが現状だと思います(店によっては電池交換さえ預かる店があると聞いてビックリしております)。ますます消費者が時計店離れをおこすに違いありません。修理を預かったら、国産品ならメーカーに直送して直してもらったり、舶来品なら輸入総代理店のサービスセンターに出している店がほとんどでしょう。

各地方にあった時計材料店も閉鎖して行き、部品の入手がだんだん難しくなってきたのも現実です。舶来品の修理を依頼受け、部品交換しなければならない場合、材料店に注文しても手に入らない時があります。一部の輸入総代理店のサービスセンターは、部品だけ注文してもなかなか販売してくれません。やむをえずその時に限って輸入総代理店のサービスセンターに修理依頼しますが、どう見ても変えなくても良い部品まで変えてしまってくる場合があり、修理料金をつりあげているなと思うときが度々あります。

修理は、部品交換は最後の手段で、あくまでも現状を回復して直すのが本筋だと私は思っております。部品を交換して直すのはただの部品交換屋で、修理屋とは断じて言えません。輸入総代理店のサービスセンターは、各時計店の技術力を推量して(店が持っている資格等を考慮)部品を供給すべきだと思います。ある有名なスイス時計のサービスセンターの預かり期間は、今頃では2か月間という途方もない長さで、どれほどユーザーに迷惑をかけているのかその会社は理解しているのでしょうか。
販売数量に見合った技術者を養成すべきか、或いは、もっと日本の時計店の技術を信用すべきではないでしょうか。ユーザーの皆さんに信用され、輸入総代理店のサービスセンターに負けない為にも日夜、技術の研鑽に勤め、ゆめゆめ手抜き仕事をしてはならないと自らを戒めております。

ある時計雑誌に著名な時計師が告白していましたが、いっぺんに6個の時計の分解掃除を超音波洗浄機にかけると聞いて私は愕然としました。あってはならない作業を平然となされていることに、あきれ果てて物が言えませんでした。時計職人、あるいは時計修理のいろんなHPを見てみますと、修理料金があまりにも安いのに出会いますが、はたしてどんな仕事をしているのか疑いたくなります。20万30万もするスイス舶来時計を修理される方は、良く吟味して修理を出されるべきで、決して値段につられてはいけないと思います。へたな修理屋に掛かれば、高価な腕時計も 二束三文の時計に変身してしまいます。

地方には現役バリバリのCMW時計師はまだまだおられますので、根気よく探して修理のご依頼をされるべきでしょう。彼らはプライドがあり、持って生まれた器用さと言う取り柄もありますが、それよりも大切な、全ての手作業に妥協しないという性格の持ち主なのです。それでなければ、あの難解なCMW試験に合格するはずはないのですから。複雑腕時計を除いて、ロレックス等のスイス高級腕時計の修理料金の上限は4万円が限度だと私は思いますが、読者の方は如何思いますか。弊店では、どんなに部品を交換してもスイス高級腕時計の修理料金は4万円以内で完全修理するように、努力しております。4万円も出せば、国産でそこそこの良いメカ腕時計が買えるのですから。