« 第28話(時計旋盤作業について)  | | 第30話(世界の4大高級宝飾時計会社について) »
« 第28話(時計旋盤作業について)  | | 第30話(世界の4大高級宝飾時計会社について) »
2007年01月21日

●第29話(近代の天才的時計師について)

奈良の女性読者からの質問があったので、ジョン・ハリソンの事について詳しくお話ししたいと思います。

『イギリスの天才的時計師』ジョン・ハリソンは元々器用な大工でしたが、時計に非常に興味を持っていたため、1725年に独自で、すの子型補正振り子を発明しました。
その時代は大航海時代で、正確な経度を測定するために高精度のマリンクロノメーターを必要としていました。イギリス議会は、高精度のマリンクロノメーターを製作した時計師には、当時のお金で2万ポンドという高額な賞金を授与すると公表していました。発奮起したジョン・ハリソンは、ついに1735年に第一号のマリンクロノメーターを完成したのです。何度もの改良を重ねた結果、第四号のマリンクロノメーターは、五ヶ月間の航海の間、何と65秒しか狂わなかったのです。平均日差にすると、0.43秒という超高精度のクロノメーターでした。その業績を高く評価したイギリス議会は、彼に2万ポンドの報奨金を与えました。現代の貨幣価値で言うと、数億円以上の価値があるでしょう。イギリスが大植民地政策をとれたのも、少なからず彼のマリンクロノメーターのおかげだと思います。

時計の父と言われているのはトーマス・トンピョンです。その弟子はジョージ・グレアム、またその弟子がトーマス・マッジです。この3人が近代の時計技術の発達に貢献した偉大な天才的時計師です。

グレアムは1715年に直進型脱進機・水銀補正振り子を発明しました。直進型脱進機を用いた柱時計は、10数年前の国産ゼンマイ式柱時計に使われていました。セイコーのカレンダー付き30日巻柱時計(4PC型)は、今でも使われている方がおられると思います。この柱時計は直進型脱進機の名作中の名作です。大切に使えば、優に50年以上使用に耐えられる機械です。我が家の居間にも現在でも正確に動いています。月差1分以内の正確さです。

マッジは1760年に分離式レバー脱進機を発明しました。これが現代のクラブツースレバー脱進機のルーツです。もし彼が現在生存していれば、ノーベル賞を授与されていたに違いありません。

『他の国の天才的時計師』
ドイツ人クレメントは1673年に退却型脱進機を発明しました。この原理は、明治・大正・昭和の掛け時計にほとんど使われていました。セイコー舎のボンボン1週間巻掛け時計は、ほとんどこの退却型脱進機でしたが、直進型脱進機にとって替われました。

ホイヘンスは1675年にヒゲゼンマイと天府を発明しました。この発明により、人が携帯できる懐中時計が開発されたのです。次回は、フランスの天才的時計師についてお話しします。