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2007年01月21日

●第94話(オメガの廉価版の名機Cal、601について)

オメガにはトップにコンステレーション・デビル・シーマスター・スピードマスター等のシリーズがありました(今でもそうですが)。最下位価格帯に、入進学・就職祝い向けに「ジュネーブ」シリーズがありました(これは今ではうち切られています)。

「ジュネーブ」シリーズに搭載されたCal、601は、手巻きカレンダー付きの名機だったと私は思います(自動巻Cal、550は1959年に開発され、Cal、601のベースになりました)。1964年に開発され、日本円にして3~4万円ほどで当時売られました。廉価版といえどもセイコーK・Sよりも価格は高かった記憶があります。

時計屋の息子だった私が初めて父親から貰った時計は、高校入学時にセイコーマチック腕時計(当時で6000円位・それでもイイ方)でしたが、友達の医者の息子がオメガ・ジュネーブ をはめているのを見ると、情けない話ですが嫉妬を覚えたものです。

ムーブの厚さは3,85mmと薄く、19800振動のロービートで17石を内蔵しておりました。地板等は全てキレイに金メッキが施され、美しい輝きを放っておりました。簡単に高精度が出る美しい完璧な機械でした(今ではこんな素晴らしい機械の入った新品の腕時計を買おうと思ったら、二十万円出さないと買えないと思います)。

当時のオメガ社はいろんな人々向けに多種多様の機械(キャリバー)を続々と生産しておりました。1926年から1970年の44年間に、160種類以上の機械を開発し発売に漕ぎ着けました(婦人用キャリバーにも幾多の名機があります。婦人用キャリバーの豊富さもおそらく世界一だと思います)。現在では1機種開発するのに2~3年(金額にして数億円)かかりますが、当時のオメガ社は1年間に平均4機種を毎年新開発していた計算になり、その計り知れない底力に驚愕するばかりです。これは他のスイスメーカーにとても真似の出来ない、追随を許さないオメガ社の独壇場でした。

まさしく、当時のオメガ社は生産量・高精度腕時計生産力・新製品開発力・人気・知名度・ステイタス性などで紛れもなくダントツで、総合力・世界一だったに違い有りません。ロレックスでさえもオメガ社にはとても対抗できずに、一目も二目も置いていたでしょう。当時のオメガ社は本当に凄かったのです(失礼ながら日本のトップメーカー精工舎などは、お側にも寄れない大きな存在でした。30年前には歴史に残る世界最強の時計メーカーだったでしょう)。

そんな強大な無敵のオメガ社が、東洋・日本のセイコー・クォーツに屋台骨をグラグラにされてしまうとは誰が想像できえたでしょうか?ところでアンティーク市場でオメガの腕時計が余りに安いのにはビックリしています。数が多いから希少価値がないためでしょうが、もう少し高い評価を受けてもイイのではないでしょうか(30年ほど前のどのオメガも素晴らしいメカ式機械が内蔵しているのに不当に低い評価だと思います)。アンティークの入門品として、私は一番のお薦め品がオメガ腕時計です。アンティークとしては当たり外れのない本当にイイ機械のメカ式が入っているのがオメガ時計です。