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2007年01月21日

●第87話(滋賀県の近江時計眼鏡宝飾専門学校について)

私が20代初頭の若かった頃、2級時計修理技能士試験を受験し、2位で合格し協会長賞を受けましたが、その時に大変お世話になった先生が近江時計学校におられました。

その先生は行方二郎(勿論CMW)というお名前で、滋賀県の大津市でタマヤ時計店という屋号の店を経営されておられました(店にもお弟子さんが常時3~4人ぐらいおられました)。常勤講師で店の経営の傍ら、近江時計学校の生徒さんに時計技術を熱心に教えておられました。2級受験のために3~4回学校にて講義を受けましたが、厳格な反面、大変情熱のある先生で生徒さんにもとても人気のあるお方でした。威風堂々とした体躯の持ち主で、行方先生の前に立つと誰もが萎縮してしまうような圧倒さを受けました。

授業内容も手抜きのない一生懸命な教え方で、いつも感銘を受けて帰路したものでした。先生の教え方が上手な為に、生徒さんも僅かな期間にグングン能力を伸ばし、2年の在籍で2級時計修理技能士試験を合格した生徒さんが毎年、半数近くにのぼりました。その中で成績優秀な生徒さんが技能オリンピック予選に出て、セイコー舎の優秀な若手技術者と対等に争いました。毎年2~3名のトップクラスの生徒さんが行方先生の推薦を受け、CMW試験を受けられるほどまで成長されたのも、行方先生の手腕のお陰といわざるを得ません(残念ながらほとんどの生徒さんは不合格でしたが、その後何回も挑戦し見事CMWを獲得された卒業者の方は何人かはおられました)。

東京にもヒコみずの時計学校がありますが、私見ですが過去の実績・歴史等を比較すれば、近江時計学校の方が充実しているのではないでしょうか。これから時計技術を専門に学びたい方は、近江時計学校のことを頭の中に入れておく必要があると思います。

今年3月中旬に近江時計学校のI氏から電話があり、1週間に2回の非常勤講師として学校で生徒さんに時計技術を教えていただけないかという有り難い招聘のお話がありました。しかし、店の経営・外商・修理といろいろあり時間の余裕もないために、鄭重にお断りいたしました。もう少し年を取り器も大きくなり、人間的にも丸みが出てきましたらお受けしたいと思っております。

僭越ながら、私も将来的には直属の愛弟子を2~3人持ちたいと熱望しております。
私の恩師、K先生も4人のCMW技師を育てられました。K先生も行方二郎先生も私にとっては大恩人ですが、お二人の先生はとてもよく似ておられます。仕事に対してはとても厳しい姿勢ですが、眼の奥には温かい愛情が溢れているのです。人間的にも大変尊敬でき、このような人に邂逅できたできた自分の運の強さに感謝したいとつくづく思います。人生にとって大変重要なことの一つに、師と呼べる人に巡り会えるかどうかがあると思います。私の人生の中で、お二人に出会えたことを一生の宝として大切に胸にしまっておこうと思っております。