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2007年01月21日

●第59話(贋作について)

先日こんな事がありました。東南アジアのある国で働いている一流会社のビジネスマン(日本人)から、オーディマピゲの懐中時計(ムーンフェイス風)を修理して欲しいと言うメールがありました。その時計は、現地(東南アジアのある国)のアンティーク・ショップで購入した物との事で、友人に預けて弊店に送るから直してもらいたいと言うことでした。

オーディマピゲの分解掃除・修理は一生涯で何十回とする時計ではないので、私は嬉しくて宅配されるのが今か今かと待ち受けておりました。そして宅急便でようやく届き封をといてみて懐中時計の文字板を見てみると何となく胡散臭く、まさか贋作ではないかしらと言うことが脳裏を走りました。裏蓋を開けてみてビックリで、程度の悪いコピーのムーブメントが入っておりました。ムーブの地板にはご丁寧にオーディマピゲの刻印までありました。贋作品の修理は受け付けていないのですぐ返送いたしました。

友人のお話によると、私どもに送る前に時計雑誌等で有名なアンティーク・ショップ「K店」に一度見てもらったところ、複雑時計で難しくて修理出来ないと言われたそうです。「K店」から本物?のお墨付き(全く頼りにならないものですが)をもらい、イソザキさんに送ったもので悪意は全然ないと言うことで謝っておられました。

海外で働いておられるそのビジネスマンの方はアンティーク・ウォッチのファンで、今まで10個以上を買われ、1個当たり1,000ドル以下の代物はないと云う、友人のお話でした。おそらくその懐中時計も1,000ドル以上出して買われたものに違いないと云うことでした(もし、そのオーディマピゲ懐中時計が本物でしたら何百万円という高値がつく時計なのですが)。

その方は買うたびに「K店」で見てもらい、これは本物ですとか、これはコピー商品ですとかと店員の人にはっきり言われたとのことで、まさかその懐中時計が贋作と思わず、ご本人も友人もガッカリなされておられました。けっこう有名である「K店」(自前の修理工房もあるところなのですが)の眼識の無さに私は驚きました。

以前にお話致しましたが、高額なアンティーク時計を買われる場合は、目利きの出来る人を同伴してアドバイスを受けて購入される方が怪我はないと思います。それにしても、アメリカ在住の時計の小話の読者の人からメールが来たり、東南アジアに住んでおられる方からメールが来たり、インターネットはやはりWWWでスゴイなーと実感致しました。もう航空郵便ってきっと死語になりますね。