« 第57話(スイス時計 ブランパンについて) | | 第59話(贋作について) »
« 第57話(スイス時計 ブランパンについて) | | 第59話(贋作について) »
2007年01月21日

●第58話(ムーブメントの美しさについて)

機械(ムーブメント)の美しさと言ったら、懐中時計(手頃な価格ではIWC・ゼニスですが、それでも40~60万円します)か、2針の手巻き腕時計(パティック・オーディマ)が何と云っても一番でしょう。クロノグラフでも、自動巻よりも手巻きの方が美しさでは数段優っております。自動巻ではローターで駆動部分が隠れてしまうのが致命的ですね。特に、バルジュー・ヴィーナス・レマニアの手巻きのクロノは30年~40年前の物でも本当に奇麗です。見ているだけで感動しますし動いていたらなおさらです。
人間ってなんて美しい機械を創造できるのでしょうか。

懐中時計はメカ時計の原点で、IWC・ゼニスの懐中時計のムーブメントは素晴らしいの一語に尽きます。懐中時計の針合わせにはリューズ式(現在ではほとんどこれです)の物だけではなく、古くはダボ式・レバー式などがあり、3通りありました。文字板もグレードによってホーロー製(針を抜くときヒビが入りやすいのでとても神経を使います)・金属ギョーシェ仕上げ・プリント仕上げの3通りあります。

精度調整を示す目安として、地板に2ポジション・アジャステッドとか、5ポジション・アジャステッドとかが刻印されていて、姿勢差をどこまで微調整しているのかを簡単に解るように示しています。その懐中時計がどこまで精度を追求しているのか知るには、ポジション・アジャステッド(姿勢差調整)のほか、緩急針のあり方を見ればおおよそ、その懐中時計のレベルが想像できます。

ピンセットで動かすだけの簡単な緩急針もあれば、ネジを回して微調整するスワンネック型や、マガ玉型のカム回転式等があり、秒単位の微調整が可能な懐中時計もあります。高精度高級腕時計がどんなに精巧に時間をかけて微調整しても、懐中時計の精度には全くかないません。グランドセイコー・ロレックス・オメガ・ロンジンの腕時計等も真っ青で足下にも及ばないのです。

懐中時計の天文台コンクールでは、メカ時計としては空前絶後の日差0,01~0,02秒を競う、とてつもない精度追求のコンクールだったのです。それほどまでに懐中時計は腕の良い技術調整者にかかれば超高精度がでるのです。皆さんビックリされたでしょう。

国鉄の標準提げ時計に使われていた19セイコー懐中時計は価格が安いにもかかわらず、緩急針調整とテンプのチラねじ(ミーンタイムスクリュウ)とで微調整ができるブレゲ巻き上げヒゲの高性能な時計でした。そこが今でも人気の秘密かもしれません。