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2007年01月21日

●第57話(スイス時計 ブランパンについて)

年間腕時計製作本数6千本前後の小さいメーカーですが、世界に名を轟かせている時計メーカーにブランパンがあります。歴史は時計メーカーで一番古く、ジャン・ジャック・ブランパンが1735年にスイス・ヴィルレに創業しました。ゆうに250年以上の歴史がある名門の老舗です(年間生産個数、数千本で非常に優れた腕時計を作るメーカーは、他にランゲ&ゾーネ・ブレゲ・ダニエルロート・クロノスイス等があります。生産個数が多いからと言ってそのメーカーが個性的で優れたメーカーと云うわけではありません。数は少なくとも魅力的な時計を作るメーカーが将来的にも必ずや生き延びてゆくに違いないのです。そこには深い味わいのある技術が歴然と存在するからです)。

ブランパンは創業以来クォーツは一切作らなくて、機械式時計のみを頑固に作り続けていました。現在では下記の6マスターピース以外のムーブメントの腕時計は製造していません。確固たる信念が経営者にあるのでしょう。

ブランパンも1970年代のクォーツクラッシュによって例にもれず会社存続の危機に遭遇しましたが、オメガのスウォツチ・グループに入ることにより、見事な復活を成し遂げました。

特に、1991年に完成した6大傑作複雑腕時計・6マスターピースコレクション(超極薄時計・月齢カレンダー時計・永久カレンダー時計・スプリッドセコンドクロノグラフCal1186・トゥールビヨン時計・ミニッツリピター時計)は、他社の時計メーカーが真似が出来ないもので追随を許しません。時計メッカのスイスと言えども、この6大傑作を独自で全て揃えているメーカーはブランパン以外には見当たりません。

ソルボンヌ大学哲学専攻のドミニク・ロアーゾ博士の協力のもと開発成功した、ブランパン1735番は上記の5マスターピースを一個の腕時計のなかに全て収めてしまった超怒級複雑腕時計で、価格はもはや付けられる代物ではないのです。価格を付けるとしたら天文学的な数字になるでしょう。どれもこれも素晴らしい腕時計なのですが、価格が高いのでおいそれと買えるものではないのが残念です。

その1
ブランパンの極薄腕時計…SS(ステンレス・スチィール・ケース)で65万円
手巻き2針…エキストラ・フラットCal2100
オートマ…9型中3針日付表示・自動巻(世界で最も薄い)男女両方あり

その2
ブランパンの月齢カレンダー時計…SSで119万円
日付・曜日・月・月相を表示する極薄型自動巻腕時計Cal6763
女性用は世界で初めて開発した、直径21mm厚さ3,2mm

その3
ブランパンの永久カレンダー時計…SSで295万円
小の月、大の月、閏年を記憶した無修正のカレンダーメカ時計で、2100年まで自動的に行う。
水晶時計ではIC導入により簡単に作れるが機械式では時計学史上では驚異的な構造です。
23石、27,40mm、フレデリックピゲ社製のムーブ採用

その4
ブランパンのスプリッドセコンドクロノグラフ時計…SSで190万円
Cal1186自社開発、21600振動・自動巻・12時間計・30分計・クロノグラフ秒針・スプリット秒針・カレンダー付き・部品総数300ピース以上。
スプリッドセコンドクロノグラフとは2つの時間経過を同時に表示できる機能です。

その5
ブランパンのトゥールビヨン時計…プラチナケース・スケルトンで1450万円
8日間のパワーリザーブ・カレンダー付き・21mm径脱進機と調速機をキャリッジ(かご枠)に入れて一定周期で一定方向に回転させることにより、姿勢差を自動的に補正する機能を装備

その6
ブランパンミニッツリピター時計…K18ケースで1500万円
ハンマーでゴングを叩いてミニッツ・クォーター・タイムをカウンターします。
とても美しい音を奏でます。
メカ時計では一番の秀逸の作品でしょう。
径20,30mm厚さ3,20mm重さ5,61g

これらの複雑腕時計の修理は、熟練の親方時計師(MASTER・WATCHMAKER)のいる当店にお問い合わせ下さい(修理期間は3ヶ月間です)。未熟な修理屋にかかれば、くちゃくちゃにされてしまう危険性があります。

PS
個人的には余り好きではなかったのですが、最近カルティエ腕時計のパシャ・クォーツクロノグラフCal053、22石の腕時計のムーブメントを見る機会がありましたが、なかなか奇麗なクォーツムーブでカルティエを見直しました。