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2007年01月21日

●第45話(ジャガー・ルクルトについて)

IWC(インターナショナル)、ジラールペルゴーに優るとも劣らない時計一貫メーカーの中に、ジャガー・ルクルト(ムーブメント供給メーカーでもあります)があります。数あるスイス時計メーカーの頂点に位置する高度の技術力、先進的な開発力をたゆまず維持してきたメーカーの一つです。

アントワーヌ・ルクルトが、スイス・ルサンティエにて1833年に創業した歴史的に由緒ある会社です。非常にレベルの高い腕時計を生産しているために年間生産数は約4万前後と少量ですが、どれをとっても素晴らしい時計ばかりです。

ジャガー・ルクルトといえば今から30年程前に、径20,50mm厚さ1,50mmという工芸的な世界最小の極薄2針手巻き腕時計を開発した事で有名です。50円玉硬貨の大きさで、厚さ(1,75mm)はそれよりも薄いといえば皆さんビックリされると思います。テンプのアームを2段階にして、窪んだ所にヒゲゼンマイをセットするという離れ業で薄くする工夫がなされているのです。

厚さ2mm以内の極小ムーブメントを開発成功した時計メーカーは今まで僅かにしかなく、パテック・ピアジェ・バセロン・オーディマ・コルム・インター・オメガ・セイコーという名だたる時計メーカーが連ねております。ムーブを薄型化・小型化する事は、大変な設計力・技術力を必要とする事なのです。

また、世界で1番小さいリビエという手巻き2針の婦人用ムーブメント(21600振動、19石、パーツ数98個)を開発しています(縦14,00mm×横4,80mm× 厚さ3,40mmという大きさで読者の皆さん物差しで一度想像してみて下さい。こんなにも小さなムーブでありながら1日ちゃんと動きそして時間も正確なんて、 どう考えても不思議ですね) 。

ジャガー・ルクルトを世界的に有名にしたもう一つの技術に、1930年に発明した気温の変化をエネルギー源として駆動する(アトモス)置き時計を作ったことでしょう。
ゼンマイを巻き上げる必要もなく、電池を入れ替える必要もない置き時計で、その当時ではセンセーションを起こしました。

各種レベルソに搭載された角形ムーブメントのトゥールビヨン、ミニッツリピーター、永久カレンダー、クロノグラフも自社開発しております。そのことを考慮すれば、ある一面に置いてはロレックス社、インター社よりも、かなり上を行く時計メーカーと言って差し支えないかもしれません。

地方都市にて時計店をしております関係上、なかなかジャガー・ルクルト腕時計の修理におめにかかれないと言うジレンマがあります。その点ジラールペルゴーと一緒でもっともっと修理をしてみたい腕時計メーカーの数少ない一つです。ジラールペルゴーと同じく日本でもう少し売れてもおかしくない時計です。日本でのネームバリューが少し弱いのと価格が高い(高くて当然なのですが)ために 普及が今一歩と言うところかもしれません。しかし本当の時計通の人は買っているに違いないでしょう。