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2007年01月21日

●第46話(時計旋盤作業について、その2)

このメールマガジンの読者の方に、時計メーカーのサービス部の人や、舶来品輸入元サービスセンターに勤めておられる人からのメールの問い合わせがいろいろあります。その中で一番多いのが時計旋盤の作業修得についての質問です。また、他業種から時計師になるにはどういう手順を踏めばいいのかという質問や、どうすれば一流の時計師になれるかというメールがきます。若い人々がこの業界に魅力を感じ関心を持たれることは有り難いことです。

時計修理には、時計旋盤技術を習得する事は必須です。時計旋盤を自由に使えてこそ本物の時計職人と言えるのです。時計部品を自らの手で製作できる人こそ真の時計修理技術者と言えるでしょう。ですから時計職人のことを英語ではウォッチメーカーと言います。しかし残念ながら1、2級時計修理技能士試験に時計旋盤作業の課題が未だかってないのが不思議でなりません。技能検定委員はなにを考えているのでしょうか。

メーカーに部品ストックがなく、天真・巻真等を別作しなくてはならない時は旋盤作業が避けて通れません。時計工具を自作するときもあります。旋盤技術の腕を上げるには、切削バイトを上手く作って磨けるかにかかるでしょう。バイトを親指と人差し指で掴み小指と薬指とに挟んで安定して荒砥石でむらなく磨き、仕上げに油砥石で完璧に磨くことが出来ればもう後は簡単です。バイト磨きが全てと言ってもイイかもしれません(切れ味のイイ、刀を作る刀鍛冶の心境でしょう)。

私はバイト磨き技術及びバイトの切削角度を習得するのに、若い時、そればかりして1ヶ月以上かかりました(修業時代、四ツ割にセイコーコロナ目覚ましクロックのテンプを挟んで天真研ぎを何度となくしたことが非常に役に立ちました。クロックの天真研ぎは簡単な作業のようですが、完璧にするにはとても熟練を要します。 手が安定していないと綺麗に出来ないからです)。バイトを見ればその人がどれほどの旋盤技量を有しているか一目瞭然です。

時計旋盤技術の指針として下記の本があります。(株)村木時計(現(株)ムラキ)発行 大川 勇先生著 『時計旋盤工作』(株)グノモン社発行 訳者 末 和海先生 『標準時計技術読本』これらの名書は既に絶版になっているでしょうから、手に入れるのは大変ですが、発行元や近江時計学校やヒコみずの時計学校には必ずや一冊はあると思います。ご覧になりたい方は問い合わせるとイイでしょう。コピーぐらいさせてくれるかもしれません。時計旋盤にはボーレー社と国産では松田光(アロウ)が高性能で有名です。私は廉価?ながら良い旋盤であるゼム社製を使用しております。

時計旋盤をお求めになりたい方は五十君商店、トップオカモト、ベルジョンに問い合わせるとイイでしょう。