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2007年01月21日

●第47話(スイス高級腕時計の価格について)

平成元年、贅沢品に課せられていた物品税が廃止となり、スイス高級腕時計も軒並み価格を下げました。ロレックス18金無垢デイデイト(18038)は昭和60年時代、定価398万円で、正規輸入品の仕入れ価格は66,7掛けの265万円もしておりました。並行輸入品ではそのロレックスは119万円で仕入れられました(1個の仕入れ値段で2個仕入れてもまだお釣りがあったのです)。当店では当然、並行輸入品を仕入れてお客様に安く売ることで、とても喜ばれました(正規輸入品であれ並行輸入品と何ら変わらないのです。日本ロレックスの保証が2年と1年の違いでだけです。そんなに1年や2年で壊れる時計ではないのです)。

平成の時代になると18038は消え、変わりに18238が登場しました。18038とほとんど同じようなデザインでしたが、小売価格は188万円と大幅にダウンしました。当然仕入れ価格も正規輸入品で125万円まで下がりました(現在では18238の並行輸入品の仕入れ価格は115万円程です)。18038の在庫を抱えていた当時の時計店は大変だったと思います。それにしても物品税13%が廃止になったとはいえ、ロレックス(18038)の小売り価格設定には疑問を感じざるを得ませんでした。

昭和40年頃、舶来高級時計に対して30%の関税、13%の物品税、合計43%もの税金がかかっておりました。小売店のマージン35%、卸商(ロレックスの場合、卸商は一新、栄光、東邦など)のマージン5%?、輸入業者のマージンを入れたら本当の輸入原価とはいかほどか、驚くほど安かったに違いありません。

日本ロレックス社は2年保証ということで並行輸入品との差別化をしておりますが、真贋が見極めることが出来、信用のおける時計店で並行輸入品を購入されたら消費者の皆さんはもっと安く買えると思います。出来るだけ安く買えた方がイイに決まっておりますものね(あくまで正規輸入品にこだわる人は別ですが)。どうして時計に限らず、舶来有名ブランドが日本ではこんなに価格設定が高いのでしょうか。独逸のベンツ車しかり、ルイヴィトンしかりです。安く売ってみんなが持っていれば優越感に浸れないためか?自尊心をくすぐるための物なのか。私には解りませんが余りにも普及すると値打ちが下がってしまうものなのでしょう。

そういえば圧倒的人気のあったフェンディの傘をライセンス生産していた京都のムーンバット社は契約をうち切られてしまいました。鐘紡もクリスチャンディオールのライセンス生産打ち切りと聞き及んでおります。両社ともこれらの品がドル箱だったため、稼ぎ頭を失って本当に痛いでしょう。フェンディ、クリスチャンディオールは売り上げよりもブランド・イメージを大切にした結果かもしれません。高級ブランドは、余りにも人気がでて大衆化するとだめなものかも知れないのです。

最近ではブランド品の勝ち組み、負け組がハッキリしてきました。かっては垂涎の的でも今では見向きもされないブランドがたくさんあります。栄枯盛衰そのものです。
日本で人気のあるロレックス、オメガの命運はどうなるでしょうか?(私は学生時代アメリカンフットボールをしていた関係でNFLをテレビでよく見ますが、ヘッドコーチの腕にはロレックスの無垢のデイデイトをよく見かけます。やはり米国でも ロレックスはステータスシンボルなのでしょう)。

日本のスイス時計の輸入総代理店の皆様への要望ですが、もう少し安く小売り価格設定をしていただけないものでしょうか。そうすれば、もっとスイス時計が日本で売れると思います。安くして市場にたくさん出回ったからといってスイス時計の人気と実力は決して衰えないと思うのですが。