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2007年01月21日

●第5話(ロレックス・デイトナ)

ロレックスファンの人なら、すでにご存じかもしれません。ロレックス・デイトナのムーブメントは、ゼニス社のクロノグラフ・エルプリメロから供給を受け、十数年来販売されてきました。プライドの高いであろうロレックス社は、自社製ではなく他社のムーブメントを使ってクロノグラフを発売していたことに対して屈辱的な気持ちを少なからず持っていたに違いないと思います(おそらく、エルプリメロを優るクロノグラフが自社で開発できなかったのではないでしょうか)。この度、やっと自社製のクロノグラフのムーブメントを開発し、デイトナに使用されることになったのです。これで、安堵の気持ちが起こったであろうと思います。

ゼニス社のエルプリメロは、36000振動(1秒間に天府が10振動)します。緩急針付きの平ヒゲゼンマイです。一方、ロレックスの新開発のクロノグラフは、28800振動(1秒間に天府が8振動) します。振動数の多い方が安定した精度を維持します。その点から言うとゼニス社の方が勝っているかもしれませんが、耐久性から言うと8振動のロレックス社の方が少しはいいのかもしれません。ロレックス社は緩急針のない巻き上げヒゲゼンマイです。そして天府には今までのロレックスと同じようにミンタイムスクリュー(またはアジャストスクリュー)が付いており、それを回すことによって時間の歩度の微調整をします。巻き上げヒゲゼンマイのメリットは、同心円状に伸縮するため重力誤差が受けにくく、姿勢差の誤差が極めて少ないのです。一方、平ヒゲゼンマイは片方にずれて伸縮するため、多少少なからず姿勢差の影響がでます。
腕時計では、平姿勢(文字板上)・リューズ下・リューズ左の3姿勢が極めて重要です。提げ時計では、平姿勢(文字板上)・リューズ上の2姿勢が極めて重要です。

ロレックス社のクロノかゼニス社のエルプリメロのどちらのムーブが優秀かわかるかは、何年かの年数が必要なのかもしれません。万が一、エルプリメロ搭載のロレックス・デイトナの方が良かった場合、今まで以上にプレミアムが付いて高額になるに違いありません。今でも、SSケースのデイトナが手に入りにくい状態なのに、そうなった時、爆発的な人気が出るでしょう。