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2007年01月21日

●第92話(スイス時計・モバードについて)

モバードと言えば懐かしがる中高年の方も沢山おられると思います。創業は1881年と意外に古く、ラショードフォンで興しました。

当時は完全なマニュファクチュールで高精度のメカ時計を生産しておりました。ニューシャテル天文台コンクールにも参加しており、いつも上位の成績を残しておりました。特に1956年、57年、58年は、3年連続トップの好成績を記録しておりました。そのことから解るように、非常に良い機械の時計を作れるスイス時計メーカーの一つであることには違いないのです。

30年ほど前にこの業界に入った頃、モバードは、ナルダン・IWC・ロンジン・オメガ・ユニバーサル・ブローバと共に日本ではかなり人気があり、実力も兼ね備えておりました。特にモバードの自動巻クロノグラフ「デイトロン」は、ゼニスと共同開発したエルプリメロを搭載しておりました(ゼニスばかり有名になりましたがモバードもこのクロノの開発に参画していたのです)。

勿論、薄型(6,5mm)の36000振動で、ブライトリング・ホイヤー・ハミルトンの3社の共同開発したクロノマチック(18000振動)の機械よりも数段上で、精度もかなり正確なものでした。アンティーク市場でモバードのクロノグラフが人気があるのもうなずけるものです。

メンズの自動巻腕時計「キングマチック」、レディスの自動巻腕時計「クィーンマチック」も素晴らしいメカニカルな腕時計で、私の脳裏にハッキリ刻みつけて記憶しております。

モバードの潜水用腕時計「スーパー・サブ・シー」も優れ物で、今でも通用する見事なデザインでした。

このように高度の技術力を持っていたモバードが最近クォーツ腕時計ばかり作っていることに、モバード・ファンの方には不満があるのではないでしょうか。昔からデザインには定評があり、現行のモデルの時計を見ても痺れるものを感じます。1日もはやくETA社製ではなく自前のメカ式機械を開発して売り出して欲しいものです。それが出来る時計メーカーだと私は思います。現在の日本総輸入代理店は大阪の栄光時計です。

栄光時計と言えばかって関西一の大規模なセイコーの卸商でした。余談ですが先代の栄光社長は、世界のセイコーに育て上げた服部時計店社長・服部正次氏に可愛がられ、押しも押されぬ業界有数の卸商に発展いたしました。人との巡り会いによって人生は大きく変貌するものと痛感致します。人生の達人はきっと佳き人との邂逅を素晴らしい巡り会いに変えていくことが出来る人だと私は思います。