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2007年01月21日

●第11話(時計油について)

時々店に持ち込まれる修理で、1ヶ月巻掛け時計のオーバーホールの依頼があります。機械を取り出してみると、素人療法でミシン油がベットリ付いている場合があります。そんな時は、その油を落とすためにベンジンで2回洗いする手間が必要です。時計油と他の機械油とは、性質・性能が全く違うので、素人療法は禁物です。当店では、下記の時計油を使っています。

1.天府受け石用油…メービスA
2.アンクル爪石用油…ルージン1号
3.ムーブ輪列車用油…ルージン3号
4.キチ車・ツツミ車等の油溜装置の無いところ用油…ルージン5号
5.ゼンマイ用油…セイコー(S-4)

主に5種類の油を使い分けて、オーバーホールします。ロレックスの場合、2番車軸受け穴石・ローター接続部分等には専用のMR3油を使います。ほとんど現在、油差しという工具を使い、微量の油を穴石に注入していますが、父の時代では油筆で油を差していました。その為、適切な量の油が差せませんでした。油差しの中で極めて難しい作業が、アンクル爪石に差す場合です。多ければガンギ車の方にこぼれてしまい、少なければガンギ車が摩耗してしまう為、細心の注意を払って作業します。アンクル爪石油には2種類あり、5振動用・10振動用のハイビート用を使い分ける必要があります。