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2007年01月21日

●第41話(最近の腕時計の消費動向について)

最近、電池交換でご来店されるお客様の腕時計を拝見すると、どうみても2千~5千円位の低額の時計がほとんどです(高くても1万円前後の腕時計の電池交換が多いのです)。一人のお客さんが一度に数個の安い腕時計ばかりの電池交換にご来店されるとウンザリ?(ちょっと失礼かな)してしまいます。電池交換の10個のうち8個はそんな廉価なクォーツ腕時計で、益々その傾向が顕著になってきたような気がします。不景気という時代背景があるかもしれませんし、地域的か何か他の特殊な原因かもしれません(他店より電池交換料金をかなり安くしているため?)。時計宝石店を経営していて、毎日ガッカリする今日この頃です。

ここ数年、ロレックス等の高額品を買われる人と極端な低額品を買われる人との二極化がますます進展したようです。中級品の5~10万円を購入される人がかなり減ってきていると感じます。昔、腕時計は貴重品で、旅館に宿泊した時はフロントに預けたものですが、そんな風潮はもう無いと言ってもよいかもしれません。日本人は腕時計に金をかけた民族と言うのはもう昔のことで、TPOにあわせて安くても正確に動けばいいと言う人たちが確実に増えてきたようです。一度目の電池交換時ですら、もう動かない腕時計によく直面します。

国産のある時計メーカーの安価なアナログクォーツ腕時計の3個に1個は一度目の電池交換時にすら動かないムーブメントが入っています。時計店で買わなくてもどこでも、そこそこ時間のあう時計が安く買えるために、時計店及びメーカーが斜陽化していったものと思われます(後継者問題もありますが、若い人たちにとって魅力がない業界の一つかもしれません。スイスも20~30年程前のクォーツ腕時計化のため若い人々が時計メーカー業界に入らず、 技術者の空洞化現象が起きたのです)。
靴下のはき捨てのように壊れたら修理しないでポイと捨ててしまうような腕時計を 身につけることはなんだか寂しいのではないでしょうか。

このメールマガジンを愛読しておられる方々は、時計の大好きな人々だと思います。
そして長くご使用に耐えられる、愛着がおきる良い時計を1個か2個お持ちだと思います。こういった方々をこれから大切にしていかないと、この業界は益々沈澱して行き、明るい時計業界の未来が無いと言っても過言ではないでしょう。低価格のクォーツ腕時計は地板・歯車にプラスチック樹脂を多量に使っている為に、私などはいくら正確さが抜群であろうとも、精巧なオモチャのようにしか思えてなりません。
その点、メカ時計は芸術的な精密機械と思えるほどムーブメントは美しい動きを致します。

防水性能がしっかりした、裏蓋がスケルトンのメカ時計をメーカーはもっと生産すべきだと思います。あの美しい動きの姿を見たら、安いクォーツ腕時計を買う消費者の人達も、きっとメカ時計に回帰してファンになるに違いないでしょう。特殊な職業人を除いて、1日に30秒狂ったところで、何の生活に支障をきたすでしょうか。秒刻みの生活よりも、ノンビリとゆったりと生きて行きたいものです。