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2007年01月21日

●第53話(スイスの時計産業について)

国産のセイコー・シチズンの腕時計は全て自社生産で、世界でも稀な完全なマニュファクチュール(一貫製造メーカー)です。全ての部品は系列の子会社で生産されています。ところがスイスでは日本とは大きく異なったシステムで分業化が進み、腕時計が作られています。下記のような3つの分類に分かれる時計製造メーカーが存在します。

・マニュファクチュール…自社で一貫して時計製造するメーカーの事で、他社より部品供給を受けません。ジラールペルゴー・ジャガールクルト・ゼニス・ロレックス・インター(一部)・オーディマ等のごく一部の会社しかスイスにはありません。しかしマニュファクチュールでないからといって、おのおの時計会社の価値が下がるものでもないのです。※ジラールペルゴー・ジャガールクルトはエボーシュメーカーでもあり、一流時計メーカーにムーブメントを売っております。

・エタブリスール…ムーブメント・ケース・文字板等をいろんなエボーシュから仕入れして組立のみを行うメーカーで、そこで腕時計を完成させます。スイスのほとんどの時計メーカーはここの範疇です。オリス(ETA社)・ラドー(ETA社)等たくさんあります。
エボーシュからムーブメント・パーツを仕入れして各社が再加工・再調整して、独自性のあるメカニカル腕時計を作ります。

・エボーシュ…エタブリスールにムーブメント・パーツを供給する、部品・ムーブメントメーカー。最大のエボーシュメーカーはSMHグループのETA社で、世界最大規模のムーブメント供給生産会社です。ETA社は1億個以上の生産量を誇り、手巻き・自動巻・クロノ・クォーツ等の各種ムーブを生産して世界中の時計会社に供給しております(推定、クォーツ85%・メカ15%)。巷に出回っているスイス時計のムーブメントの半分以上はETA社製ではないでしょうか。他にバルジュー・ヴィーナス・ケレック・ユニタス・フェルサ等が有名で、他にも何十社もあります。各エボーシュ社が製造メーカー印を持っており、機械の地板に必ず刻印させています。

時計材料店にパーツを注文する時は、時計名とエボーシュ名、部品名を同時に言って発注します。現在、滋賀県の読者の方より、父親の形見という大切なブライトリング・トップタイム腕時計(手巻き・クロノ・17石・HPに掲載)の修理依頼を受け預かっておりますが、全体的に錆がひどく、機能回復無理な所があり、かなりの難物で悪戦苦闘中です。

この時計のムーブメントはエボーシュメーカーのヴィーナス社製キャリバー178(刻印から判別、星のマークがあり)で40年ほど前のものです。この時計の壊れたパーツはもはや入手困難でなかなか大変な修理です。

その頃のブライトリングはムーブをヴィーナス社から仕入れて時計を作り販売していたのが解りました。今でもブライトリング社はグループのケレックからムーブを仕入れております。クロノの専業メーカーのミネルバ時計もバルジュー社よりムーブメントの供給を受け、アブスシリーズのクロノを発売しております。