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2007年01月21日

●第80話(セイコー極薄時計、Cal 6810について)

3月18日~23日かけて、ある読者の方より通算8回電話がありました(後日、写真までお送りいただきました。よっぽど手に入れたのが嬉しかったのかなー)。最近手に入れたセイコーCal 6800がどのような時計か調べて欲しいという依頼でした(急に言われても何がなんだかさっぱり解りませんでした)。

近所の時計店(長い間、金庫に眠っていたSS側の中古品です)から4万円で入手したものらしいのです。足繁く通って店主を粘り抜いて説き伏せて、購入にこぎ着けたらしいのです。

資料で調べてみますと1969年に発売された極薄型手巻き腕時計(19,7×16,9 厚さ1,9mm)であることが解りました。その時計はセイコー(第二精工舎)が最初に手がけた極薄型手巻き腕時計だったのです(私は今だかって一度もその時計のOHをしたことはありませんから記憶にないはずです)。

その時計店は30年前にセイコーを沢山売り(当時の時計店は本当に沢山どこでもセイコー・シチズンを売っていたのです)その時計を優先的に仕入れできたらしいのです。そんな店にとって大切な腕時計を4万円で手放すとは、よっぽどその読者さんの交渉術が上手かったに違い有りません。

1991年にカンバックしたCal 6810のセイコー極薄型ドレスウォッチは、そのCal、6800から派生的に生まれた時計です。1991年のこの復刻版は当初年産400個足らずと聞いております。それほど極薄型は大量生産にむかない商品なのです(この商品は現在も継続して発売中です。SSケースで25万円致します)。ウルトラスリム(超薄型)が最近余り人気がないのは実用的でないためでしょうか。ドラマチックなデザインが可能ですが、余りの薄さで衝撃に弱く、日常生活では安心して使えないからでしょう(ROLEXが人気があるのはケースが堅牢で安心して使えるのも大きなポイントでしょう)。

以前に時計の小話で書きましたが、ジャガー・ルクルトの極薄手巻き時計をOHしたとき、あまりの薄さに驚きました。厚さは1,75mmしかなかったのです。セイコーの6810よりもさらに薄かったのです。修理中はものしごく神経を使いました。ちょっと強く地板を押さえると曲がるのではないかという想像を絶する薄さでした(テンプのアームが紙のように薄かった記憶があります)。そんな薄さにもかかわらず、ちゃんと精度は出たので、さすがジャガー・ルクルトだと感心しきりでした。

人間って本当にスゴイ物を作り出せる能力を持っているのですね。