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2007年01月21日

●第71話(難物時計の修理について その2)

東京の読者の方より珍しい修理依頼が先月舞い込みました。オメガ?懐中時計のムーブメント(8551734・15石Cal38、5LT1・切りテンプ・ブレゲヒゲ・50~60年程前の品か?)が内蔵の両面スケルトンの球形の置き時計というものです。初めて見るタイプで、こんなオメガがあるのかとビックリしました。

お預かりして見てみますと、ガジガジという音がしてゼンマイが巻けない状態で、丸穴車の歯が1枚欠けておりました。天真も折れており、天輪がガタガタで短針も折れていました。OHと天真別作入れ替え・丸穴車の入歯でおそらく直るものと思い分解掃除して、天真を旋盤で別作しました。輪列のザラ回しも良く、直る物と高をくっていましたが、なんとキチ車と噛み合う丸穴車の見えないところのウォーム歯が連続して3個欠けているではありませんか。これじゃあリューズでいくら巻いても丸穴車が空回りして、ゼンマイは巻けないはずです。

まさかこのウォーム歯が欠けているとは、分解する時にうっかりしたのです。別作出来るパーツではないために、あっちこっちの時計材料店に在庫があるか問い合わせ ましたが入手出来るはずもなく、やむを得ずギブアップ宣言になってしまいました。

分解・洗浄・組立・注油・天真入れ替え・短針合わせ等の延べ10時間の作業が全く無駄に終わってしまったのです。アンティークの修理の場合、このような時が時々あります。直っていないのでお客様に1円も請求出来るわけではなく、全くの徒労に終わってしまうのです。これも一つの勉強かなと思い慰めています。それにしても残念だなー(お客様も直るのが大変楽しみにしておられたのにご期待に添えなくて申し訳ない気持ちです)。もう一歩という所なのに。