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2007年01月21日

●第96話(目覚まし機能付きセイコー・ベルマチックについて)

兵庫県小野市の読者の方より、1968年製のセイコー・ベルマチック27石Cal、4005Aの修理依頼を受けました(アラームベルが機械仕掛けで15秒間鳴り続けます)。非常に長い間、止まっていて使っていない代物で、整理箱にしまっていたのを取り出して送られてきました。

この時計は国産では初めて、諏訪精工舎が1967年売り出したセイコービジネスベル(5振動、精度等級C 日差-15秒~+25秒)の姉妹品です。もう25年以上見ていない時計で懐かしさを覚えました。行方のしれなかった友人に偶然に街角で会ったような喜びに似たものを感じました。

分解してみましたが、二十数年間動かしていないだけあって、全体にかなりの錆が廻っておりました。文字板止め足も片方が折れておりました。

錆びた部品をキレイに落とし、ハケ下洗い・超音波洗浄・注油・組立・調整後、見事に蘇りました(錆びておりますと作業時間は倍以上かかり手間も大変です)。緩急針調整で、日差プラス15秒前後にまで精度が蘇りました。

ムーブはとても堅牢に作られてあり、定期的にOHすればまだまだ数十年使える時計です。セイコーの時計を修理するたびにいつも感心するのは、設計度の高さです。最近のスイス高級時計・I社のよく故障した腕時計の修理が沢山舞い込みますが、I社のものと比較してセイコーのムーブの方がかなり安いにもかかわらず、精密でありながら堅牢性が高く、壊れにくい設計がなされております。30~40年ほど前のセイコーの技術力は大したものであったとつくづく痛感し、日本人として誇りに感じます。マスプロ・マスセルのために非常に良い機械であったにもかかわらず、セイコー腕時計の価格は良心的であったのでしょう(この時計はHPに載せてありますので関心のある方は見て下さい)。

時を前後して、奈良県の読者の方よりジャーガー・ルクルトのアラーム付きの腕時計(Cal,No735417-601)の修理依頼が舞い込みました。今から4~50年ほど前の時計で中の機械を見てみましたがかなりくたびれており、骨董品の部類にはいる物ですが、ご期待に添えるか解りませんが修理のチャレンジをする予定です。機械時計は愛情を持ってご使用になられると、その所有者の一生涯の腕の伴侶になるもので、大切に使用したいものと思います

※スイス高級時計の操作上の注意事項※
R社・I社・Z社等の瞬間早送り機構が付いたカレンダー腕時計の操作上の注意として、時計が8時~4時を差しているときはカレンダー早送りは絶対しないで下さい。
時計の針の時刻が昼の間はかまわないのですが、うっかりして間違えますので8時~4時を差しているときはリューズをいじらないと決めた方がイイでしょう(故障の原因として1番多いのが誤操作です)。原則として分針の逆回しはしない方が賢明です。5分から10分位ならかまいませんが。クロノグラフをお持ちの方はよくよく使用書を読む習慣を身につけましょう。