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2007年01月21日

●第77話(グランドセイコーの歴史について その2)

三重県のM氏よりKS(キングセイコー)に引き続きグランドセイコーの修理依頼を受けました。この時計は、M氏のお父様が勤続25年の褒賞として有名総合電器会社から貰われた記念品です(同期の1000名の方が頂いたという事です。すごい数ですね。その1000個のGSの行方はその後どうなったのでしょうか。このGSはアンティーク市場で25万円~30万円で売買されています。と言うことは、3億円の価値あるGSがどこかで眠っているわけですね。時計の小話を読んで気が付いてくれたらいいのですが)。

送られてきたGSは1965年製ですが、1960年に初めて売り出されたGS(この時は25000円で売り出され当時の大卒初任給が14000円の時代です)と同じ機械のCal、5722Aが入っておりました。このムーブは手巻きで25石入りで大型テンプを採用し、平均日差-3~+12秒に調整され、発売されていました。このGSは諏訪セイコー(セイコーエプソン)で製造されたのもので、それからは第2精工舎(セイコー電子工業・現セイコーインスツルメンツ)が競争しあって交互に新作のGSを発表していきました。

1960年から12年間メカ式のGSは生産・発売され、それ以降の1975年よりGSクォーツに完全に変わられてしまいました。1998年にメカ式のGSが復活するまで、25年間以上のメカ式GSのブランクがあったのです。

今までに発売されたメカ式GSは男性用で7機種のムーブが開発され、婦人用は1機種(19系・非常に珍しい高精度のメカ式)のみでした。セイコーエプソンが5機種で、第2精工舎(セイコー電子工業)が3機種を開発しました。全国のGSファンの方で全部をお持ちの方がおられるかもしれません。もしおられるとしたらビックリものです。

セイコー内の2つの優秀な子会社が切磋琢磨して競合しあい、素晴らしいGSのメカ式時計を市場に送りだし続けたのです。その中では1968年9月に発売された45系(セイコー電子工業)と、1969年6月に発売された6185系(セイコーエプソン)が断然他を圧するムーブメントでしょうか。6185系(セイコーエプソン)のGS・VFA(Very-Fine-Adjustedの略)は、平均日差-3~+3秒に調整された品が合格品でした。この2機種はおそらくスイス天文台コンクールで素晴らしい成績をおさめた技術調整者・小池健一氏、中山きよ子氏、稲垣篤一氏らの手によって世に送り出されたのものでしょう。

この後どんなにイイ機械がセイコー舎から発売されても、この2機種を追い越すものは生まれてこないものと私は思います。1970年大阪にて開催された万国博のタイムカプセルEXPOー70に、我らのセイコーGS・61GAWが入っております。果たして5000年後の西暦6970年の人々は、このGSをどのような目でながめるのでしょうか。おそらく5000年前の人間がこれほどまでによく合う時計を作っていたことを知って腰を抜かすでしょうか。この修理したGSはHPに掲載致します。