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2007年01月21日

●第76話(スイス・ETA社について)

セイコー・シチズンと共に世界最大級の時計ムーブメント供給会社の一つにETA社が あります。セイコー・シチズンの日本2大メーカーに対抗する為に、エボーシュ・グループの集合体として1984年に成立しました。

1970年代のセイコー・クォーツ・クラッシュにより、1600社余りあったスイス時計関連業界は大激震を起こし、何回となく統廃合を繰り返し、今では500社余りに減少しております。それでも日本のセイコー・シチズン・オリエント・リコーの4社に比べて断然多いですね。ETA社の成立は、おそらくスイス国家の国策的な会社と言っても差し支えないかも しれません。

現在、時計ムーブメントの生産数は軽く1億個を越えています。その1割弱がメカ式でしょうか。最近その比率が高まっていると聞いております。ETA社の中には過去の有名なエボーシュ・メーカーが参画しております。代表的なものに、バルジュー、ヴィーナス、ユニタス、アシールド等があります。

工場は世界各地にあり、スイス・ドイツ・フランス・タイ・マレーシア等が主な工場です。メカ式はスイス本国のみで生産していると聞き及んでおります(やはりメカ式には熟練の技術者が必要なのでしょうか?)。メイドイン・スイス時計の50%以上は、ETA社のムーブが入っていると断言しても過言ではないほど寡占しています。あなたがもし、スイス時計を持っておられるのでしたら半分の確率でETA社製でしょう。

最近人気隆盛のU・N社、I社・タグホイヤー等や、ラドー・オリス・オメガ・モーリスラクロア・ロンジン等もETA社のムーブを採用しております。

クロノグラフ・Cal、7750(私はこのムーブが余り好きではないですが)は特に有名で、スイス時計のクロノのほぼ過半数を大きくこえる割合で使われております。自動巻Cal、2893系も頻繁に採用されております。有名なU・N社、I社の20~40万クラスの腕時計には、Cal、2893系が金メッキが施されて使われています。タグホイヤーの10万円台の時計には金メッキしないでそのままの地板のまま使われています。ここ最近若い女性に人気の出てきたノモス手巻き腕時計の機械は、ETA社手巻きCal、7001が金メッキして使用されています。

Cal、2846は普及型自動巻キャリバー(リーズナブルで高精度の出る安定したムーブメント・ETA社の代表的ムーブ)として有名で、私は何十回以上もOHしたか解らないほど多くの数にのぼります。極端にいえば目を閉じていても組立ができるほど慣れた好きなムーブです。

ETA社の機械式のキャリバーは、大小(男持ち/女持ち)合わせて20種類以上あるでしょうか。スイス時計をお持ちの皆さんは、自分の時計の機械がどこ製か知っておくのも悪くないかもしれません。ロレックス・ゼニス・GP・ジャガールクルト等のマニュフャクチュールは殆ど100%近く自前の機械ですが、他のスイス時計メーカーは自前のムーブを入れたり、一部をETA社からムーブを供給して入れたり、全てETA社の機械を入れたりしているメーカー等があります。

高額スイス時計を購入される人は、メーカーブランドで買うのか、機械ムーブメントメーカーで買うのか、デザインで買うのかしっかり見極めてから購入された方が失敗は無いでしょう。技術力があって人気のある有名なスイス時計メーカーは、やっぱり自前の機械を入れて売り出して欲しいなと私は願っております。高級スイス時計の裏蓋を開けてETA社製が入っていると少しガッカリしてしまいます(決してETA社製が悪いと言うことではありませんから誤解の無いようにお願い致します)。ETA社はセイコーと同じように良心的で信頼の出来る世界有数の時計メーカーです。