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2007年01月21日

●第74話(キング・セイコーについて)

この間、三重県のT・Mさんより修理依頼を受けた、1971年製造のキング・セイコーについてお話しします。この時計はCal4500A・25石の手巻きムーブでハイビートです。この45系はセイコー腕時計の名機中の名機で、時計の小話第23話でお話致しました「天文台クロノメーター」のベースになった機械です。

45系で準高級グレードがキング・セイコー、高級がグランドセイコー、最高級品が 「天文台クロノメーター」合格品腕時計として売り出されたのです。今見ても非常に堅牢に作られてあり、機械を見ているだけで言いしれぬ喜びが沸き上がってまいります。

普通より多い5番車まであり、ガンギ車が秒カナ車を回すという設計がなされています。30年前に、こんなに素晴らしいムーブをセイコー舎が作っていたことに、今更ながら 感動を覚えます。現行品のクレドール手巻きCal4S79Aよりも数段優っているのではないかと、私見ですが思ってしまいます。

OH・ゼンマイ切れ・香箱車の歯こぼれの依頼ですが、もうゼンマイに関しては純正パーツがないために、酷似したトルクを持つ代用品による修理になる予定です。この時計(KS)は記憶では10回位しかOHしていませんが、とてもよい精度が出た思い出があります。読者の方で、もしお持ちの方は大事にお使いになって欲しい時計だと思います。45系かどうかは裏蓋の番号を見れば確認できます。もしあれば家のお宝になるに違い有りません。

最近修理したオメガ・コンステレーションCal 564、同じくオメガ・ジュネーブCal 1012も素晴らしいムーブメントで、現行のオメガの機械よりもイイのではないかと思ってしまいます。アンティークが人気があるのも、30年前のメカ式腕時計のムーブが頂点を極めたものであった事を素人の皆さんがよく知っておられるからでしょうか(もしそうだとしたら凄いことですよね)。

例えは悪いかもしれませんが、家族経営で代々やってこられたとてもおいしいパン屋さんが、過当競争でやる気をなくし、大手資本のY崎パン・S島パンを仕入れて自店のパンのように売っているのが一部のスイス時計メーカーの実体なのかもしれません。