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2013年01月14日

●続時計の小話・第110話(手巻腕時計の使い方)

市場に出回ってから、40年以上脈々と人気が引き継がれてきて 現在でも現役バリバリの手巻きムーブメントがあります。 そのムーブメントはプゾー社製Cal.7001(現在ではETA7001と表記されています)で 多くのスイス腕時計にこのムーブメントが採用搭載されています。

弊店取り扱いのオメガ、エポス、ノモス、フレデリックコンスタント、ルイエラールにも採用されています。 ETA7001は安定した機械で精度が出るのが自慢で、 多くのスイス時計メーカーが自社ブランド腕時計にこの機械を入れて、販売してきました。

特にノモス社はこの機械に『トリオビス・ファイン・アジャストメント緩急針』を採用しているために、 秒単位の微細精度調整が容易に出来、クロノメーター級の精度が出ます。 このETA7001のゼンマイ巻上げする時に注意点が一つだけあります。

40年以前では時計ユーザーは市場に機械式しか出回っていない為に、 手巻き腕時計の操作方法を十分に認知していたために、ゼンマイを巻き過ぎて切らす、 という事がほとんどありませんでした。

そういえば、今まで何百回とOH・修理したであろう、セイコー手巻腕時計、 セイコークラウン、セイコーロードマーベル、セイコースカイライナー、セイコーゴールドフェザー、キングセイコー、 グランドセイコー等のセイコーのゼンマイ切れ交換修理は恐らく修理全体の数%も無かったに違いありません。 (名機のCAL45系は10振動でゼンマイトルクが強いため切れることが往々にしてありましたが)

恐らくユーザーの方は指でリューズを回す回転数をどれだけ回せば、ゼンマイが一杯まで巻けるか感覚的に判っていたからに 違いないからです。

もう一つの要因にセイコーのゼンマイの品質が非常に優れていたせいかも知れませんが。 ここ10数年のメカ式腕時計の人気の沸騰により、クォーツから手巻き腕時計を初めて手にされた人も多いものと思われます。 その人達に注意喚起してもらいたい事は、 リューズを何回転すれば、この時計のゼンマイが一杯に巻けるか、知って欲しいという事です。

最近では裏スケルトンタイプの手巻腕時計が多いので、ムーブメントの角穴車のネジが何回転すれば ゼンマイが一杯にまで巻けるか確認して頂きたいと思います。 普通一般には大凡、角穴車ネジが6回転前後でゼンマイが一杯に巻けます。 そこでゼンマイを巻くのを止めてそれ以上リューズを無理して巻上げしなければ、 ゼンマイが切れるという故障を避けられると思います。

勿論どんなに注意して巻上げしてもゼンマイ強度劣化によるゼンマイ切れの故障があります。 (手巻きは1~2年に1回、定期的な0Hが必要不可欠です。自動巻きの場合は2~3年に1回、定期的な0Hが必要不可欠です。)

自動巻きの名機R社も時折ゼンマイが切れた故障に出会いますがこの原因はユーザーの方の過失は殆ど無いと思います。 (勿論、定期的な0Hを怠ったり無理な過度の手巻の巻上げは禁物ですが)

数年前に新発売された手巻きのF社の丸穴車と角穴車の間に連結する伝え車の軸受けが販売して1回目の0H時にへたって 磨耗していたために日本正規輸入元にスイスメーカーにその点を改善するように伝えましたが、直ぐにスイス本社が対応し 丸パイプを入れるようしたとの素早い改善連絡を受けました。F社が一介の小さい時計店の店主の話しを聞く謙虚な姿勢に感心しました) (R社でも最近ではゼンマイ一巻目にグリースを注油しています。以前は注油されていなかった記憶が有ります。)