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2007年08月13日

●続時計の小話・第64話(最近のロンジン社の動向)

今年、創業175周年を迎えた、ロンジン社が新スポーツコレクションを発表し、大きく変容を遂げようとしています。

1832年スイスのサンティミエで創業した歴史ある名門のロンジン社は、1960年代後半のの機械式時計が頂点を極めた頃、ロレックス社、オメガ社、IWC社、ジャガールクルト社と並び賞されるほどの機械式腕時計の名門時計会社でした。

クロノグラフムーブメントを世界最初に製作したのはロンジン社ですし、1896年開催された第一回アテネ近代オリンピックでも、ロンジン社の1/50秒計のクロノグラフが採用されているほどの技術力に優れた時計会社でした。ロンジン社の歩んできた歴史は、天文台コンクールでいつも上位の常連でしたし、冒険とスポーツに限りなく挑戦してきた時計会社と言えます。

皆さんがよくご存じなのは、1927年5月、チャールズ・A・リンドバーグがニューヨーク~パリを33時間30分かけて大西洋無着陸横断飛行に携帯した腕時計はロンジンの腕時計でした。1899年のルイジ・アマデオ氏の北極海探検、1904年のJ・E・バーニー氏による北極探検、1928年の南北極探検をしたリチャード・E・ハート氏等はいづれもロンジンの時計を持参して、快挙を成し遂げたのです。

36,000振動のハイビートの高精度腕時計ロンジン・ウルトラクロンや、ロンジン・コンクェスト・エレクトリックや、1969年に発売された年差60秒という当時としては、超高精度のロンジン・ウルトラ・クォーツ等も自社開発し、発売するほどの高度な技術力を持った、他社を圧倒する時計会社でありました。

この数年、量販店のチラシを見ると必ずと言っていいほど、ロンジンのクォーツ腕時計が60~70%OFFで売り出されている事を目にしてかっての栄光あるロンジン社がこれほどまでに値引きしないと売れない、とは寂しく情けない感じがしたものでした。

なんとか昔の栄光と名声を取り戻して欲しい、と思っていたのはロンジン・ファンの方なら誰でもそう思われていたのではないか?と思います。

今年になって、スウォッチグループの一員であるロンジン社に対して、スウォッチグループ親会社が、本気になってバックアップし、かっての名声を取り戻そうと懸命に力を注いでいるのがハッキリ解ります。

今年発売されたロンジン・スポーツコレクションはどれも見事な出来映えで、デザインも秀逸で価格もこの造りでは、想像だに出来ない低価格に抑えていて、今後ロンジン社は多くの機械式時計愛好家から温かい応援の眼差しを受けるに違いありません。

その代表的な機種にロンジン・レジェンドダイバー(税込み定価241,500円)、ロンジン・グランヴィテス(税込み定価288,750円)、ロンジン・ハイドロコンクェスト(税込み定価288,750円)、等々の素晴らしい魅力のある出来映えの良い時計が沢山新作として発表されています。

最近、スイス時計メーカーがスイスフランの高騰により、値上がりしている事を思うにつけ、よくぞここまで価格を抑えられたものと感心しています。

ロンジン社は、今後マニュファクチュール化を目指さないで、スウォッチグループの一員であるムーブメントメーカーETA社から、優秀な汎用ムーブメントを安定して供給される事の裏付けがあるからこそ、この様な思い切った価格設定が出来たものと思います。

ちょっと名前の売れたスイス腕時計が100万円を超す時代になった今、その一方でスウォッチグループが取り扱っているロンジン、ハミルトン、ティソ等、小売価格の設定が他社と比較して如何に良心的かいつも驚かされます。