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2007年01月21日

●第274話(『クロノメーター』合格規格品)

機械式腕時計の高精度を保証する称号として『クロノメーター』 合格規格品があります。 1951年にスイス時計製造協会がクロノメーター規格を制定しました。 1969年にセイコークォーツが市場に登場するまで、時計愛好家の人々にとって、文字板にクロノメーター(Chronometer)と表示されている腕時計を所有する事は、 一つの大きな喜びでもあり、大きな誇りでもあった訳です。

日本では、遅蒔きながら1968年に日本クロノメーター検定協会が設立され、 1970年にクロノメーター検定国際委員会(CICC)に加盟して、国産のクロノメーター腕時計が世界中に認知され始めたのです。(キングセイコー・クロノメーター、シチズン・クロノメーターがとみに有名です。)

おりしも、その時代は、クォーツ腕時計の黎明期と重なった為に、次第にメカ式クロノメーター腕時計の存在意義が薄れてゆき、今日、日本で発売される公式のクロノメーター合格規格品の腕時計は、製造されなくなってしまって一抹の寂しさを感じざるを得ません。(メカ式クロノメーター腕時計とクォーツ腕時計の精度競争では同じ土俵の上に立てるものではありませんでした。)

今日、日本でもメカ式腕時計の復活・隆盛を観るにあたり、 公式の日本クロノメーター検定協会が再度、復活し国産のクロノメーター腕時計が 再登場する事を熱望しています。

当時、日本クロノメーター検定協会は、『優秀クロノメーター成績表示』のものと、 一般的なクロノメーター合格品との二通りのものがありました。 5姿勢の平均日差は、優秀クロノメーターが、(-1~+10秒) 一般的なクロノメーター合格品は(-3~+12秒)でした。

平均日較差、最大姿勢差、最大偏差の項目で、優秀クロノメーター成績表示の方が当然、勝れた数字が出ていました。当初、スイスでは、クロノメーター歩度公認検定局を略して(BO検定)と呼ばれておりましたが、現在では、クロノメーター検定協会を略して(C.O.S.C)と呼ばれております。

平均日差の精度も、現在の方がより厳しくなり日差(-4~+6秒)に変更されています。 クロノメーターに準ずる高精度規格品に、独自の検定基準を設定している 時計があります。

国産のグランドセイコーには、独自の『グランドセイコー検定基準』があり、パテック・フィリップ、バセロン・コンスタンタン等には、『ジュネーブ・シール規格品』があります。また、ジャガールクルトには独自の『マスター・コントロール』合格規格品が 発売されています。

1960年代のメカ式腕時計が圧倒的に席巻を極めていた頃、クロノメーターと言えば、ほとんどの時計愛好家の人々の脳裏に浮かんだのは、オメガ社とロレックス社の 腕時計でした。両社共、その当時20万個前後の多数に及ぶクロノメーター高精度機械式腕時計を生産しており、他社の有名な時計メーカーのクロノメーター合格品は、市場にほとんど出ていないのが実情でした。

中でも、婦人用メカ式クロノメーターと言えば、オメガ社の独断場で圧倒的な 有利な立場にあり、多くの名機を生産しておりました。 当時のオメガ社の名声は、世界中に響き渡りロレックス社に優るとも劣らない と言える時計造りをしていたのです。