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2007年01月21日

●第273話(クィーンセイコーについて)

東京都のH様から、下記の様なメールを頂戴しました、『40年位前に銀座の服部時計店で父に買ってもらった思い出の時計です。以来ずっと使っていましたが、5年位前に動かなくなってしまいました。或る時計屋さんに修理をお願いしましたが、部品が無いので直せないと断られました。もう直らないのかと半ば諦めておりましたが、お店のホームページを拝見し、同じ時計を修理されたご経験がおありになるとのことでしたので、磯崎様なら何とかして下さるのではないかと思い、このメールを送ります。何卒宜しくお願い申し上げます。』という内容でした。

このクィーンセイコーは 1966年、第二精工舎で生産されたものです。 Calは1020 23石で、振動数は19,800(5,5振動)ムーブメントの大きさは 15.5mm×13mm厚さ3.5mmで、当時としては、婦人用高級腕時計でした。

恐らく、精工舎が、1964年に発売された44キングセイコーの女性版として位置づけて、発売したものと思われます。地板全体が金メッキされいかにも高級腕時計としての風格を持っている美しい小型ムーブメントでした。往年の名機オメガ婦人用手巻Cal,483に少し似ているでしょうか?(3番車,4番車,ガンギ車,アンクルに受石を採用している手巻き婦人用としては 多石と言える機種でした。)当時の第二精工舎の技術レベルを遺憾なく発揮した時計と言えるでしょう。

初代のクィーンセイコーは、1962年に発売された、Cal.330で、上記のCal1020は二代目になるクィーンセイコーです。三代目は、1965年に発売された、Cal.2519のものでした。四代目は1966年に発売された、Cal.2539(Cal.2519の姉妹品)で五代目が1968年に発売された、8振動の、クィーンセイコー・ハイビ-ト(Cal.2559)でした。六代目が、1969年に発売された、17クィーンセイコー・スペシャルでした。

このスペシャル版の社内精度等級はLDで、日差-35~+55というものでした。 最後のクィーンセイコーが1970年に発売されたCal,1020で振動数は21600に変更され 社内精度等級はLAで、日差-15~+25という精度のものでした。

1968年に、発売された、婦人用手巻きグランドセイコー・ハイビート(10振動)の GS規格精度(日差-3~+12)や、1944ハイービート・クロノメーター女性用中三針手巻き腕時計の精度LA(日差-15~+25)よりも、クィーンセイコーはかなり精度が落ちるものでしたが、それでも、当時の女性用普及品の精度とは、比較にならない程の、 正確さと言えるものでした。

一般的に女性用の機械式腕時計は、小型化した為に、精度が出にくいのは 致し方無いもので、その事が、逆に、GS婦人用手巻きの精度を際だたせる 結果になったと言えるかも知れません。