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2007年01月21日

●第270話(女性用メカ式)

愛知県のH様からSEIKO、36,000振動 婦人用手巻き腕時計(Cal.1944A 23石)の、 修理依頼を受けました。

この婦人用ハイ・ビートの腕時計は、1974年第二精工舎で生産されたものです。 ムーブメントは長方形で、縦19.6mm横12.9mm厚さ4.4mmの女性用としては、 少し大ぶりなサイズになっていました。

GSハイ・ビート36000婦人用手巻き腕時計(Cal.1964A)の普及版と言える代物です。 発売当初、精度等級はLA(日差-15~+25秒)になっており、 当時の婦人用の腕時計としては、精度の出ている高級手巻き腕時計でした。

この機械のベースとなったムーブメントは、 1969年に発売されたGSハイ・ビート36000婦人用手巻き腕時計(Cal.1964A)です。このGSハイ・ビート36000はクロノメーター規格に入っており、 GS精度基準を合格した当時としては、世界一の精度を保有していた素晴らしい女性用腕時計でした。輪列や、テンプ等のパーツ類が効率良くレイアウトされ、 地板の表面研磨も美しい機械でした。

30年程前の婦人用腕時計の精度は中級品で日差-30~+60秒狂うのは普通で、時間精度要求の厳しいご婦人方には、ある程度人気があり、ポツポツ売れた記憶がありましたが、なにせ、ムーブメントが若干大きい為に、デザインが限られており、ファッションセンスに富んだ女性には、なかなか受け入れられなかった様に思います。

このセイコーの36000振動の婦人用腕時計は、市場寿命が短く、 アッというまに消え去っていった様な記憶があります。 その為に、残存しているこの機種は恐らく少ないものと思われ、 アンティークとして非常に貴重な腕時計ではないか?と思います。

石川県の方から修理依頼を受けた、 ROLEXパーペチュアルデイト婦人用自動巻 (Cal.2030 28石) の腕時計についてもお話したいと思います。

ロレックス婦人用自動巻腕時計の機械と言えば、 現行の(Cal.2135 29石 28800振動)が現時点では、 最高峰の機械と言えるかもしれません。 Cal.2135に至るまでに、ロレックスは、弛まず女性用メカ式腕時計を 開発・発売してきました。

Refナンバー.6504~6515は、Cal.1120(ムーブ直径20mm19800振動)が搭載され、Refナンバー.6800~6807 は、Cal.1160(ムーブ直径20mmオートマ19800振動)が 搭載されました。このCal.1160は、ロレックスの男性用名機と言える機械Cal.1570  26石を 縮小した婦人用と言えるものです。

Cal.2030 28石はRefナンバー.6706~6771までに採用されたムーブメントで、珍しい特徴を持った機械でした。特にヒゲ棒に2本の人工ルビーを使用していましたし、緩急調整はヒゲ持ちの所に微細調整出来るマイクロスクリューを取り付けていました。(一般的にロレックス社はテンワにマイクロスクリューを取り付けています)

また、秒カナ車にクッション座金を取り付ける代わりに、 円形の小さな永久磁石を取り付けていました。今まで、35年間修理作業をしてきて、唯一の方法であったのかなと思います。(察するに、永久磁石を取り付けている為に、秒カナ車のカナ部分に超ミクロな鉄粉が取り付いて、故障の原因の一つになったのではないか? と推察しています。 その為に、その後のCal2130 2135には、この方式は採用されなかったのでしょう。)