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2007年01月21日

●第261話(アラーム機能付き腕時計)

先日、レビュートーメン・クリケット(AS ア・シールド社製 Cal.1930 17石)の修理依頼を頼まれ、オーバーホールを終了しました。

『クリケット』、というアラーム機能付き手巻き腕時計を初めて開発したのは、 1858年創業のバルカン社で、1947年に市場に売り出した時計でした。 1947年と言えば、昭和22年にあたり、第二次世界大戦終了後の混乱激動期にも関わらず、アラーム手巻き腕時計を開発したバルカン社は、永久平和国スイスにあればこそ、出来た快挙ではないか、と思います。

このバルカン・クリケットは、太平洋戦争中のアメリカ大統領トルーマンや、戦後のアイゼンハワー、ニクソン、ケネディ、ジョンソンという歴代のアメリカ合衆国・大統領が、常時愛用した腕時計としてつとに有名です。バルカン・クリケットのメカニズムは、勿論、駆動用とアラーム用の二個の香箱ゼンマイを内蔵しているのですが、一個のリューズで、右回りに回せば『アラーム用ゼンマイ』が巻き上げられ、逆回しに回せば、『時計駆動用ゼンマイ』 が巻き上げられる、という構造になっていました。

バルカン社は、その後、1961年にMSRグループ組合に参入する事になり、1986年以降は、『レビュー・トーメン・クリケット』のブランドで発売する様になり、バルカンという老舗のブランドは残念なことに姿を消してしまったのです。しかし、2001年に、PMH社がクリケットの商標権を取得して、『バルカン・クリケット』が見事に復活したのです。

『レビュートーメン・クリケット』をオーバーホール中、驚いた事に、 1958年国産のC社が発売した『C・アラーム 17石 当時の価格で7,200円~』とムーブメントが寸分違わず同じである、という事がわかり、ビックリした事でした。(99%全く同じでしたが、地板等の形がほんの少し、違うだけの代物でした。)

ア・シールド社が、C・アラームを真似たのか(或いはムーブメントの供給を受けたのか)、またはC社がア・シールド社のアラーム・ムーブメントを模倣したのか(或いはムーブメントの供給を受けたのか)、真偽の程は今となっては、ハッキリ断定は出来ませんが、推察するに、プライド高い、白人社会のスイス時計会社の人々が東洋のアジア・日本人が開発した機械を真似るとは想像すら出来ない事なので、恐らく、C社がア・シールド社のアラーム・ムーブメントを参考にしたのではないかな?と独断的な想像をしてます。

そう言えば、かつての、国産のS社もスイス・フォンテンメロン社の婦人用手巻きを 参考にして、婦人用手巻き腕時計を製作した事を思えば、 ありうるのではないか?と回想しています。