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2007年01月21日

●第262話(ティソ・デッド・ストック)

弊店取引先のスイス時計輸入商社の某女史から、電話が突然かかってきました。今年のバーゼルフェアに商談しに出張した折に、スイスの地方販売代理店の経営者が おりしも亡くなられ、その社長の部屋・倉庫等を整理していましたら、 1960年代後半のティソット(現在名ティソ)のデッド・ストック婦人用手巻き腕時計が何十本と出てきたので、まとめてお売りしたいので、買っていただけないか? との急な商談が某女史に持ち上がったそうです。

その女史は、日本でのメカ式腕時計の復活・隆盛を目のあたりに見ている為に、『これは日本の時計愛好家の方々に受け入れられるのではないか?』と判断し、 まとめて全て購入して、持ち帰って来たそうです。インターネットで、弊店がティソを正規取り扱いしているのを知るにあたり、弊店でこのティソット腕時計を販売して頂く訳にはいかないか?という突然の電話があった訳です。小生も非常な関心が起き、すぐに送って頂く様、手配をお願い致しました。

受け取ってみると、デザインもシンプルな腕時計で、必ずや日本の方々に受け入れられるのではないか?と思い各一本づつ仕入れ致しました。機械の保存状態も良く、非常に満足が起きる出来映えの腕時計でした。(湿度の高い日本ではこのような状態で何十年と眠っていられることは出来なかったと思います。)

ムーブメントを見てみると、キャリバーは709-2、 17石の機械でしたが、 造りはロンジンの名機、手巻き紳士用腕時計キャリバー702  17石、 ティソット紳士用手巻き腕時計キャリバー2451、 17石を小型化した様な 設計の見事なムーブメントでした。

35年ほど前には、このティソット腕時計は当時の価格で、恐らく4万円前後で販売されていた高級時計だと思います。時計産業国として歴史のあるスイスにはこのような埋もれたデッド・ストック話はまだまだいっぱいあるような気がしてなりません。廃屋と化した時計家内工業の建造物を家捜しすればビックリする品が 出てくるのではないでしょうか?

メカ式腕時計は、紳士腕時計の分野においては、ありとあらゆる機種の腕時計が巷に氾濫する程の活況を呈していますが、婦人用メカ式に関しましては、まだまだ品揃えが不十分で、これから時計メーカーが研究開発して新製品を発売してくると思いますが、まだまだ長い時間がかかるのではないか?と思っています。