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2007年01月21日

●第259話(カレンダー瞬間早送り機構について)

 カレンダー(日付)を夜中の12時に瞬間的に送り変える機構には、各時計メーカーの技術陣が、知恵を絞って工夫しています。一番有名なのは、ロレックス社の『デイトジャスト』でしょうか?現行のCal.3135には、わずか6個のパーツで瞬間早送り機能を持っています。

1960年代後半に、セイコー社から発売された、キャリバー45系の手巻きのGS・KS等にも瞬間早送り機構がついておりました。また、 Cal.5146系のセイコープレスマチックや、Cal.5246系のセイコーバナック等は、 45系とはまた違った蟹の手のような形のパーツで送る方法を採っていました。どちらのムーブメントも、第二精工舎が製造したもので諏訪精工舎からは瞬間早送り機構がついた時計は売り出しはなかった記憶があります。

オーディマ・ピゲ自動巻きCal.K2121のカレンダー瞬間早送り機構はどこも 真似が出来ないような独創的な方法を取っていました。 今でも記憶に強く残っています。
現行のETA社には、ラドーやフォルティスのデイデイト付き瞬間早送りには、 Cal.2836-2が搭載されています。 (フォルティス・コスモノートシリーズ) ハミルトンのデイデイト付き瞬間早送りには、ETA2836-2の姉妹機Cal.2834-2 (直径29mm厚さ5.05mm25石)が採用されています。 (ハミルトン・カーキキング)

両方のこのETA社の方式は全く同じで、使用パーツ数が少なく 非常に簡潔な方式で恐らく、特許を取得しているものと思います。 Cal.2836-2、Cal.2834-2は、廉価版自動巻機種ETA2824-2から派生的に生まれてきた 兄弟機種です。

一般的にETA高級自動巻ムーブメントCal.2892-2よりも、 ETA2824-2は性能が落ちる様に思われていますが、ETA2824-2は、2892-2よりも大型テンプを採用しており、どちらかと言えば、精度が絞りやすい安定した 機種と言えます。(小生はどちらかと言えば2824-2系の方が精度が絞りやすく好きなのですが自動巻機構のパーツの耐久性で少し疑問を持っています。)

各時計メーカーの瞬間早送り機能が付いた時計を今まで沢山見てきましたが、私見ですが、現行のETA方式が一番優れているのではないか?と思っています。現行の国産最高峰と言えるセイコーGSにカレンダー瞬間早送り機構が無いのが残念で、設計を見直して取り付けて欲しいと願っております。(カレンダー瞬間早送り機構は高級腕時計の一つの象徴でもあるからです。)

瞬間早送り装置がついた腕時計を使用するにあたって、 特に注意しなければならない事は、 時計の時刻の夜の八時~夜中の午前三時の間に、 カレンダー早送りを絶対してはならない、と言う事です。

送り爪がカレンダー板を送ろうとして噛み合っている時に、早送り操作をしますと、 送り爪にムリな負担がかかり、爪が変形したりして、故障の原因になったりします。 (そう言う故障になった腕時計の修理にも多く体験しています。)

機械式腕時計は、非常に繊細な仕組みを持った精密機械ですので、 誤操作の無いよう愛情を持って接して頂けたら、と希望します。