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2007年01月21日

●第228話(時の浪漫)

栄華を極めたルイ14世(在位1643-1715)から、16世(在位 1774-1792) の住まいであったフランス・ベルサイユ宮殿は、豪華絢爛な部屋が700室もあるそうです。その数にもビックリさせられますが、ベルサイユ宮殿に設置されている当時からの蒐集された貴重な置時計・掛時計の数が300個にのぼるそうです。その300個を修理・補修するベルサイユ宮殿には、お抱えの時計修理職人が現在2名おられて毎日、修理作業や補修点検をしているそうです。(300個の時計の重鎮・ゼンマイを巻き上げるだけでも大変な作業と思います。)中でもカラクリ時計の一番なのが、正時になると文字板の上に左右二人の騎士が表れ、次に中央の扉が開いて太陽王ルイ14世が表れ、それと共に、上の方から王冠が出てきて、 ルイ14世の頭に戴冠するというものです。

唯一無比のからくり時計を保有する事は、当時は地位・権力・富の象徴として扱われてきたのでしょう。ベルサイユ宮殿には当時の技術の粋を集めて天文置時計も制作され、それは文字板に西暦年数・月・曜日・日・ムーンフェイズ・子午線を表示してあり、現在の今でも正確に動いているという代物です。当時の時計技術の先進国はおそらくフランスが一番であっただろうと推測されます。カトリック教徒への弾圧により、フランスの優秀な時計職人がスイスに亡命せざるを得ない状態に追い込まれるまでフランスには、当時世界最高レベルの時計技術者がいた、 と推測するのは容易な事です。

不幸にもマリーアントワネットが、人類史上最高峰の時計師アブラハム・ルイ・ブレゲに 発注した、超複雑懐中時計はマリーアントワネットが完成するのを見ずにして 亡くなられたという事実は、悲しい哀愁を呼ぶものです。

東北大学のN元学長が、青春時代(心の旅路)を回想して、 ロンドンのある有名大学を再訪しそこにも現代でも通用する、 精度の高いアンティーク天文置時計が存在する事を紹介されて いましたが、近代西欧の時計技術のレベルの高さに、驚嘆します。

日本から発端したクォーツ腕時計の歴史はたかだか30年余りの時しかありませんが機械式時計の歴史は何百年と遡れる永久の時間でそこにユーザーの方々が 時の浪漫を感じるのでしょうか?機械式時計は誤差がでるという欠点を覆い尽くすほどの魅力(極少のムーブの中に込められた人間の知恵と汗の結晶)を内蔵しているからなのでしょう。