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2007年01月21日

●第220話(女性用電池腕時計の登場)

今から30年程前、昭和46年にシチズンが画期的な女性用電池腕時計を発売しました。その時計は、シチズンコスモトロンL「Cal.58」というネーミングで発売されたテンプモーター式の電池腕時計でした。昭和41年にシチズンが紳士用電池腕時計X8(エックスエイト)を発売して以来、女性用がいつ発売されるか誰もが期待し、待ちに待った女性用電池腕時計でした。

女性の方は一般的に男性よりも腕の運動量が少なく、女性用自動巻腕時計を購入されても運動量が少ない為に充分にゼンマイが巻かれなくて、明くる日の朝には止まっているというケースが往々にしてありました(何度も何度もそういうクレームに会った記憶があります)。一般的に機械いじりが好きでない女性にとって、手巻きや自動巻腕時計はなかなか使いこなせない腕時計でしたが、水銀電池1.30V、一個で一年間駆動し続ける、このシチズンコスモトロンLの登場は、年輩の女性の方や運動量の少ないオフィスレディの方々に圧倒的な支持を受け、大変良く売れた記憶が鮮明に残っています。

このシチズンコスモトロンLは、市販された腕時計では世界最高の振動数を誇る毎秒12ビート(43,200振動/毎時)の高精度のムーブメントでした。大きさは15.3mm×17.9mm。厚さは4.91mmというコンパクトな設計で、対抗可動磁石型テンプ調速式を採用し、引き磁石を取り付けたインデックス車がテンプの振り石と直接噛み合う方式を取り、従来のテンプ式電池腕時計に見られたアンクルは無くなっていました。

部品総数も少なくメンテナンスが非常に易しい電池腕時計でした。付加装置として電源スイッチ・秒針停止装置・微動緩急装置・パラショックが付いていました。

当時の女性の人々には、小さな水銀電池一個で一年間休み無く動き続けるこの腕時計は絶賛される程の支持を受けたのです。クォーツの時代になって、机に長い間仕舞いこんでいても、いつも動いているのがあたり前の現代の人々にとっては、非常に理解されにくい事ですが、30年前にこのような、一年間休むこと無く動き続ける電池腕時計の登場は、女性の方々に驚きの目で迎えられたのです。