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2007年01月22日

●第295話(エベルの修理)

和歌山県のM様から修理依頼を受けた、
EBEL ディスカバリープロダイバー(ref90939 13 6061) Cal.93 19石、
定価税別385,000円は時計のデザインも優れていましたが、搭載されている機械は非常に繊細なムーブメントでオーバーホール完了まで、時間がかかりました。(1年程前に他店にて修理されたそうですが調子・具合が悪く弊店に依頼が来ました)

搭載されていた、機械は、フレデリック・ピゲ社Cal.951(スモールサイズの自動巻ムーブメント、直径24.4mm 厚さ3.25mm 28,800振動)が採用されていました。フレデリック・ピゲ社と言えば、ブランパンの復興に多大な貢献を及ぼした欠かせる事の出来ない有名ムーブメント製造メーカーです。フレデリック・ピゲ社はスイス高級腕時計ブランパン社以外にも、ユリス・ナルダン社、エベル社等にもムーブメントを供給しています。

エベル社の基本はクオリティに最重点を置いており、その結果として五年間という、長期国際保証をしている事です。(この他社の追随を許さない長期保証制度は自社の製品に絶対的な自信を持っていることの裏返せば証明でもあります。)ムーブメントのみならず時計ケース、バンド、文字板、針等にも厳しい品質検査を課しておりあらゆる厳しい検査を通った合格規格品パーツのみを使用して『EBEL』という完成度の高い腕時計を市場に送りだしています。

生産個数はそう多くないのですが、クォリティに、とことんこだわりを強く持っている為に、世界中に多くの根強いエベル・ファンを勝ち得ています。エベル社は、1911年創業以来、クロノグラフ生産にも力を入れており、その技術力は高い評価を受けていました。

最近ではCal.137を搭載した、『EBEL 1911クロノグラフ・オーバルカウンター』がつとに有名です。どこかのゴテゴテした煌びやかなデザインではなくシンプルで清楚な美しいクロノグラフ腕時計です。このようなシンプルで上品なデザインのクロノグラフ腕時計はきっと何時までもあきることなく使用者に愛され続けられていくでしょう。

それにしても、フレデリック・ピゲ社の、ムーブメントは、薄型・小型化・個性化しており、分解・刷毛手洗い洗浄・組立・注油・ヒゲ調整に神経を集中して作業をする為に、作業終了時点で、本当に疲労困憊致します。ムーブメントの体積比率でならロレックスCal.3135のおそらく五分の一以下だとおもわれます。

こういう、密度の高い修理作業をしてきますと、ETA社のムーブメントがどんなにか、たやすく修理が出来、時計職人をほっとさせる機械であるか、つくづく思いしらされます。そのアフターサービスが容易な為に、ETA社採用のスイス時計メーカーが、多くなってしまった原因だとつくづく思います。

フレデリック・ピゲ社のムーブメントはとても緻密で繊細でパーツ数が多くとても大量生産に適合しない高級時計メーカー向けの超精密機械であると思います。

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