« 続時計の小話・第129話(シチズン時計の荒井寛子氏) | | 続時計の小話・第131話(フレデリック・コンスタント社の動向) »
2021年06月15日

●続時計の小話・第130話(2017年国際高級時計展)

2017年の国際高級時計展『SIHH』が1月16日から1月20日までの五日間、スイスのジュネーヴで開催されました。スイス・ドイツの高級機械式腕時計メーカー30社が今年の新作を一堂に集めて展示されました。

今年の傾向は文字板に濃紺の色を採用するメーカーが多かった事です。そして復古調のケースの外径をこぶりにした腕時計が目立っていました。毎度の事ながら、ムーンフェイズ機能を搭載した薄型オートマチック腕時計が多かったようです。

目を引いたのは、モンブランの新作クロノグラフです。モンブラン社は2007年にマニュファクチュールメーカー・ミネルバ社を買収し、かつてのミネルバ社が作り続けてきたブロンズカラー、及びミレルバーアローと呼称される個性的な針を採用したアンティーク調の腕時計に仕上げていました。注目を集めていたようです。

モンブラン社に買収されたミネルバの工房には、1941年製造の精密工作機械が今も現役で働いているそうです。古き良き時代の工作機械を破棄せずに現代まで使用しつづけてきたミネルバ社の時計職人に尊敬の念を抱かざるをえません。

先日BSを見ていましたら、『ウオッチバレー 独創の技をつかめ』という番組が再放映されていました。天才的ロボットクリエイターの高橋智隆氏がスイス各時計会社を訪問し、自分がロボット製作で苦労をしている箇所のヒントをスイスの時計技術者からアドバイスを貰う為に訪問する内容の番組でした。

特に面白く興味関心が起きたところは、彼が天才時計師ダニエル・ロート氏の工房を訪ねて、いろんな話をしているシーンでした。ダニエル・ロート氏が高橋氏に「パーツ造りは時間がかかるし、辛い作業が続く」と本音を言っておられたのが興味深いセリフでした。

ジャガールクルト社も高橋氏が訪問され、複雑時計専門部門のクリスチャン・ローレン氏、フィリップ・ヴュレン氏と話をし、ジャイロ・トゥールビヨンの組み立て様子を興味深く見ておられる姿が印象的でした。ジャイロ・トゥールビヨンの心臓部は約100個のパーツで出来ていてその総重量は僅か0,2gだそうです。またオートマター製作の世界的有名人フランソワジュノー氏の工房を訪ねて色んな機械仕掛けの仕組みから氏は多大なヒントを日本へ持ち帰ったに違い無いと思います。非常に見応えのある番組でした。