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2013年01月14日

●続時計の小話・第108話(ラ・ジュー・ペレ社)

セイコーと並び称される日本の時計メーカー・シチズン社が、2008年10月にアメ リカの時計メーカーのブローバー社を2億5000万ドルで買収した事は、当時とし ては、この業界に大きなインパクトを与えました。 ブローバー社は1960年に音叉腕時計・ブローバーアキュトロンを開発・発売した 事で、有名で世界中で4000万個を販売した当時としては世界有数の時計メーカー でした。

ブローバー社と技術提携してシチズン社は自社ブランド『ハイソニック』という 音叉腕時計を発売した経緯があり、密接な関係をブローバー社と保っていた為に 買収が巧く運んだのではないか?と思います。 ブローバー社は音叉時計に固執しすぎた為に水晶腕時計クォーツを開発する事に 遅れを取り、会社の業績が急速に悪化してシチズン社に買収されてしまったもの と推察ます。

そのシチズン社が2012年今年4月にプロサー社を50億円で買収したという報道が 新聞でされていました。プロサー社と言っても、読者の方には耳慣れない名前か もしれませんが、そのプロサー社の小会社に有名な会社が二つ含まれています。 一つはプロテクト社で、もう一つが有名なラ・ジュー・ペレ社(旧ジャッケ・SA)です。 ラ・ジュー・ペレ社は、1985年創業で名機ヴィーナス175復活させて、見事な復 刻版(Cal.LJP4440)を出しました。また完全な自社生産のスピリットセコンド・ クロノグラフムーブメント Cal.LJP861も開発に成功しています。

ラ・ジュー・ペレ社ムーブメントで、特に有名なのは、Cal.LJP7361の角型の機械で多くの時計メーカーが採用して、販売しています。弊店取り扱いのエポスに もこのムーブメントを搭載した、腕時計販売していましたが、入荷してすぐに売 り切れてしまった記憶があります。

他のムーブメントには手巻きの小型クロノグラフムーブメントCal.LJP5000、ア ・シールド社のアラーム・ムーブメントを発展させて製作したアラーム・ムーブメント Cal.LJP5800も生産しています。これらのムーブメントはスイス高級腕時計会社 『グラハム時計会社』『コンコルド時計会社』等多々に渡って供給しています。 またトゥールビョンも既に開発済みになっています。

シチズン社は、本当に言葉は悪いですが、安い買い物をしたと思っています。 シチズン社がスイスのムーブメント生産会社・マニュファクチュールを獲得した 訳は、高級機械腕時計の分野で、大きくスイス時計会社、国産のセイコー社に水をあけられているせいと推察します。 セイコーには高級機械式腕時計グランドセイコーが存在しているにも関わらず、 シチズン社の高級機械式腕時計ザ・シチズンは種類も少なく知名度も薄く販売数 量もGSと比較してかなり少ないものと思われ、将来的にラ・ジュー・ペレ社のムー ブメントを搭載した、シチズンブランド、ブローバブランドの機械式腕時計を発売していく 意図が見え隠れ致します。

その時期に来ればセイコー社の機械式腕時計は大きなダメージを受けるものと想 像出来ます。一番の危惧する点は、ソニーがバブル時期にアメリカ映画会社MGM (コロンビア・ピクチャーズエンターテイメント)を買収し、松下電器がアメリカ映画会社 MCA(ユニバーサル・ピクチャーズ)を数千億円という高額で買収したにも関わら ず、わずか数年で撤退せざるをえないところに追い込まれて買収が失敗に終わっ たことです。

当時『日本がアメリカの魂を買った』と揶揄され、批判された事が 思い出されます。 果たして東洋人の日本人がプライドの高いスイス人のムーブメントメーカーを巧 く経営し操れるか?その手腕がシチズン経営陣にあるのかどうかです。 非常に魅力的な買収なのでシチズン社が巧くラ・ジュー・ペレ社を自社の小会社に 組み込んで行き立派に成長させていって欲しいと願って止みません。