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2008年03月15日

●続時計の小話・第78話(ロレックス婦人用手巻き Cal.1400)

弊店をよくご利用していただいている、神奈川県M様からお母様が愛用されている腕時計の修理依頼をお受けしました。

送られてきた時計は『ロレックス婦人用手巻き REF.2649 Cal.1400 18石』で、大凡35年程前の高級腕時計でした。(当時でおそらく8万円前後した高級婦人用腕時計でした。)

ロレックス社の紳士用腕時計は防水性能も高く、時計愛好家の人達からケースが堅牢で高い精度を持っている時計として、その当時から広く認知されていました。また紳士用のムーブメントCAL、1570は、名機で時計職人にとって精度が絞りやすく、組立安いムーブメントとして高い評価を受けてきました。

ロレックス社の各婦人用ムーブメントも、これに優る精度の出る機械に出くわした事がありません。
Cal.1400 18石(φ13.74mm厚さ3.27mm)も婦人用ムーブメントとしては耐久年数が長く保てる様にパーツ、パーツがしっかり厚みを持って重厚に造られていました。針合わせの時に、頻繁に動く日ノ裏押バネもシッカリ厚みを持って製造されている為に、まだまだ各パーツが寿命がある状態と言えます。

3-40年前の国産の腕時計の日ノ裏押バネは、よく頻繁に折れ、針合わせの時に不都合が生じたものでした。弊店は3-40年前の国産のムーブメントのパーツをある程度は持っているので、時折アンティークのセイコーやシチズンの修理が来ても対応出来ますが日ノ裏押バネはよく交換しますので無くなりつつあります。

ロレックス社のムーブメントのオーバーホールを今まで何百回としてきましたが、未だかつて日ノ裏押バネが折れていた、という記憶は極わずかしかありません。それほど、ロレックス社のパーツの素材や厚みは簡単には破損しないように造られています。

ロレックス社のCal.1400に、対抗してその頃、オメガ婦人用手巻き腕時計のCal.650 17石(φ12.70mm厚さ2.85mm アンクルはサイドレバーと呼ばれる形を採用していました。ドテピンは無く地板を切削した空間がドテピンが代わってアンクルを拘束するという方式です。セイコー婦人用手巻きにもこの方式がありました。)がありました。

このオメガ・Cal.650もロレックス社のCal.1400に、優るとも劣らない精緻極まる美しいムーブメントで、地板にはピンクゴールドの波形模様付き厚メッキ仕上げが施されていて、目映い程の宝石の煌めきの様なムーブメントでした。時計職人の好みによって、Cal.1400、ΩCal.650は、賛否が別れると思いますが、小生にとってはどちらも忘れられないムーブメントです。

オメガ・Cal.650の姉妹ムーブメントにCal.640がありました。この機械はケースの裏側に防水リューズを取り付けた手巻き時計で、なかなか面白い仕組みになっていました。当時から、ロレックス社とオメガ社はライバルとして覇権を争い凌ぎあってきましたが、一時期オメガ社がロレックス社に水を開けられた時期も有りましたが、今後は再度ロレックス社の最大のライバルとして、大きな強い存在になっていくだろうと、推測しています。

先月のスウォッチグループの展示会の中で、オメガ社が社運を賭けたと思われる新機構の新製品が一杯陳列されていました。その中で特に目を引いたのは、オメガ・ブースの中央に陣取っていた、『オメガ・センタートゥールビヨン』でした。金無垢のケースに納められていた『オメガ・センタートゥールビヨン』は、他を圧倒して大きな光芒を放っていました。

このオメガ・センタートゥールビヨンはオメガ複雑時計専門の優秀な時計師僅か5人が組み立て調整を担当しているそうです。1個のオメガ・センタートゥールビヨンを完成させるのに、一人の時計職人が一ヶ月という日数がかかるそうで驚かされてしまいます。