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2008年01月04日

●続時計の小話・第73話(クォーツの逆襲なるか?)

昨年(2007)の秋以降、スイス製腕時計の高級品クラス(50万円~100万円前後)の売れ行きが悪くとても苦戦している、という話をスイス輸入元商社の営業マンの人からよく再三に渡り聞きました。

R社、J社、Z社、I社等のスイス有名ブランドの腕時計も歳末商戦では、期待を裏切り、一昨年度よりも、売上高が減少したのではないか?と囁かれています。原因はいろいろ考えられますが、年初以来のユーロ高騰により輸入価格が昨年4月より軒並み上がり、それがひいては日本での販売価格への転嫁で、値上がりしたのが大きく影響したと言えるかも知れません。

またアメリカのサブプライム住宅ローンの焦げ付き信用不安で世界中に金融破綻の連鎖が起こるのではないかという消費者心理に大きな暗い影を落とした事も、影響があったと思われます。また昨年末、日経平均株価が年初より大きく値下がりした事も先々日本の経済の将来に対しての、漠とした不安感があったかもしれません。

また、昨秋以来マスコミ等で大きく取りあげられてきた、ワーキングプアの切実な問題、低賃金に抑えられている320万人以上に昇る派遣社員の方々の報われない問題等が、舶来高級腕時計を購入予定の人々になんらかのマイナス要因が強く働いたのかもしれません。

一方で、ハミルトンやルイエラール、エポス等のスイス普及品クラスの腕時計には、世界中から注文が殺到し、納品が裁ききれないという、ジレンマに襲われました。特にハミルトンの日本の輸入代理店であるスウォッチグループジャパンにも売れ筋のハミルトンの在庫が売り切れてほとんど無く、注文受けた日本の時計店は納品できずに大いに悩んだ事でした。

元々、ハミルトンやルイエラール、エポスは日本での小売価格を目一杯に押さえ込んであり、昨年の秋の値上がり率も他社のブランドと比較して、非常に低く抑えていた為に、シビアになってきた腕時計購入予定者の方々から大いなる賛同を得たものでした。悲しいかな注文が殺到しても輸入元に在庫が無かったという残念な結果になった店が多かったと思います。

ハミルトンの営業マンの人に聞いた所によりますと、ETA社のムーブメントが予定どうりに入荷してこない為に大幅にスイスで生産予定が狂っている、という話しをされていました。恐らく、スイス本社のスウォッチグループの統括部門では、ETA社のムーブメントを高価格で売れる他のブランドの高級腕時計に優先的に納入している為と思われて仕方ありません。

日本のスイス高級機械式腕時計を愛好してこられた人々も、度重なるスイス腕時計の値上がりに業を煮やして再度購入するのを躊躇った気配があると、思います。日本のスイス腕時計の輸入商社の経営者の方々には、スイス高級品腕時計が今まで嘘のようによく売れたからといって、傲慢にならず安易な値上がりは出来うる限り避けていただきたい、と思わざるをえません。そうでないと、これだけ機械式腕時計が売れてきた今、その熱い消費に冷や水を浴びせかねません。

日本のトップクラスの売り上げを誇る有名時計卸商のセールスマンから聞きましたが、歳末商戦で大手百貨店の時計売場に応援に行った所、やはりスイス腕時計の高級品は軒並み売れ行きが悪く対前年度かなり落ち込んだそうです。その一方で、1~3万円クラスのスイスやイタリア製のデザインが秀逸な廉価クォーツ腕時計がよく売れたそうです。弊店でもキャサリンハムネットのクロノグラフ、カルバンクライン、トラサルディのクォーツが歳末によく売れました。

この現象が一時的な傾向だったのかそれとも、これから大きく育っていくのか暫く見守るほかありません。これらの魅力的なデザインのクォーツは、6~7年で使い捨てしても十分元が取れる腕時計で、今後機械式腕時計に対して、大きな脅威に育っていくのではないか?と思われて仕方ありません。

・・・執筆後記・・・

皆様、新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくご購読の程お願いいたします。
日本の読者の方のみならず、英語圏、ドイツ語圏、中国、韓国等の多くの国々の方々に読まれていることも嬉しく思っております。今年の北陸の正月の気候は昨年とはうってかわって冷え込みが厳しい、いつもの北陸の正月でした。

皆様は初詣にどこの神社・仏閣にお出かけでしたでしょうか。

今年もスタッフ一同気持ちも新たに、皆様のお役に立つサイト運営に努力してまいります。
2008年が、読者の皆様にとって素晴らしい飛躍の1年になることを祈念して、
年始のご挨拶にかえさせていただきます。

今年も弊店HP&BLOGと『続・時計の小話』をお引き立て賜わりますよう宜しくお願いいたします。