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2007年12月17日

●続時計の小話・第71話(あのブローバ社が)

シチズン時計は、先月アメリカの著名な時計会社BULOVA社
(本社アメリカ・ニューヨーク州、1875年ジョセフ・ブローバがニューヨークに宝石店を開業したのがブローバの歴史の出発です。)
の、発行株式数を全て取得して、完全な子会社にすると、発表しました。

10月4日に株式譲渡契約書を締結して、来年1月10日に、全株式が引き渡されるそうです。買収金額は288億円になるそうです。(非常に大きな投資と言えるでしょう。一方のセイコー社は子会社のセイコージュエリー社を最近解散いたしました。宝飾事業は今は難しい時代です)

シチズン社がブローバ社を買収した原因は、巷間色々取りざたされていますが、セイコーにALBAがあるように、シチズンには第二ブランドの普及版に弱く、以前にセイコーALBAに対抗して、廉価版のジャンクションや、Q&Qが上手く市場に浸透しなかった苦い経験があったからなのかもしれません。

また、世界的に名前が知れ渡っているブローバのブランド名に惚れ込んだのかも知れません。何れにしてもシチズン製ムーブメントを搭載したブローバ高級腕時計が来年度には市場を賑わすものと思います。

現在のブローバ社は、アメリカ、カナダ、スイス、香港に事業所を展開して、年間売り上げ規模は約240億円程度の時計会社になっています。ブローバ社と言えば、音叉腕時計アキュトロンを開発・発売した有名な時計会社で以前から、シチズン社とは、深い関係がありました。

1969年にセイコー社がセイコー・クォーツ・アストロンを他社に先駆けて発売した為に、水晶腕時計の開発の遅れを取り戻すべく1970年、シチズン時計(株)は、米国ブローバ・ウォッチ社との合弁会社、(株)ブローバ・シチズン(資本金9,000万円)を設立し、音叉腕時計の技術供与を受け、1971年音叉式腕時計(シチズンハイソニック、)の販売した経緯がありました。

その後の推移は『水晶腕時計の興亡』に詳しく書きましたがセイコー・クォーツに無惨にも敗れ去った過去を持っています。

ブローバ社は、ウォルサム時計会社、タイメックス社と共に、アメリカを発祥とした、世界的に有名な時計会社です。日本のシチズン時計の小会社として、果たして世界中の人々から支持され、認知されていくかどうか?幾ばくかの不安があります。

ごく最近、日本を代表とする松下電器がアメリカの魂と言って過言では無い、アメリカの映画会社(ユニバーサル映画)を買収しましたが、なんら業績を上げる事無く、大きな赤字を作って撤退した事は皆さんご存じだと思います。

杞憂に終わらなければいいのですが、シチズン社も松下電器の様な、同じ苦い蹉跌を踏むのではないか、思われて仕方ありません。何とか大きな投資に見合う成功を成し遂げて欲しいと願っております。