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2007年11月22日

●続時計の小話・第69話(後継者が育って)

弊店の時計技術通信講座の2003年度の修了生の静岡県のK君から、とても嬉しいメールが先日届きました。

真面目で手先が器用なK君は、2005年には長野県の信州・匠の2級時計修理士に合格しましたが、その後も時計技術の研鑽を積み上げ、今年の秋に2回目の『信州・匠の1級時計修理士』試験に臨み、その結果、栄えある合格をしたとの知らせを受け、昨今の暗いニュースが続く中、小生にとって、とても嬉しいニュースでした。

K君が、異業種に従事しながら休日に時計修理の勉強を励んで、限られた時間しかないというハンデキャップを背負いながら、1級時計修理士試験に合格したという事は素晴らしいの一語に尽きます。

彼の話によると、修理する時に集中力を高める為に、妻と子供を実家に預けて、静かな環境を作って、勉強されたそうで、その姿勢・熱意には頭が下がる思いであります。今後も合格に甘んじる事なく、さらに上を目指して腕を磨き立派な時計師として、世間から認められる人になって欲しいと、思っております。

昨年度の最後の修了生で優秀な成績で卒業した神奈川県のN君は、K君と同等の能力を持った青年であり小生も何かと期待していましたが、この度、来春の国家検定2級時計修理技能士試験を受けたいとの連絡を受け、彼のやる気に喜んでいます。

一度で合格するのも大変良いことではありますがK君のように、2度目で合格するように、少し気持ちにゆとりを持って試験に臨むようにアドバイスしています。

国家検定2級時計修理技能士試験は、試験教材がクォーツである為、彼はオークションで旧型のセイコー・クォーツを2個手に入れる程の情熱があり、そのセイコー・クォーツキャリバー0923の技術解説書が弊店にあったので、コピーして彼の元にお送りしました。

N君もK君に続いて、資格を獲得して欲しいと願っています。時計技術通信講座をしたおかげで、K君やN君の様な能力ある青年と知り合え、時計技術の後継者が育っていくことに万感の思いがあります。

一昨日(11/15)より、静岡県の沼津市で『2007年第39回ユニバーサル技能五輪国際大会』が開催されました。

46ヶ国約2,800人の予選を勝ち抜いて選ばれた優秀な若人・職人が集まり、48種の職種(溶接・タイル張り・建築大工・家具・建具・自動車工など)で技術を競い合う大会が行われています。

彼等は、将来的には、各国の産業の生産現場でリーダー・屋台骨になる人達です。

株式投資や、為替相場等の金融相場で一攫千金で何億、何十億と儲ける仕事もありますが、コツコツと地道な仕事をこなし、製品を造り上げていくという、腕の良い職人が沢山いて繁栄していく産業こそ、国のしっかりとした基礎を築き国を発展させる何物にも替えがたいものです。競技課題に時計修理技術が今回無くなったのは、残念であります。

今まで時計メーカーに勤める日本の若き時計技術者がこの大会に参加して、金メダルを沢山取ってきた過去の実績もあり、今後は是非、時計修理技術を競技課題に復活して欲しい、と願って止みません。