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2007年11月15日

●続時計の小話・第68話(2006年度のスイス・クロノメーター総数)

スイス時計協会(FH)の資料によりますと、2006年度にスイス・クロノメーター検定協会(COSC)が認定した、クロノメーター証明書発行総数は、約130万枚でした。

前年対比10.7%の増加でした。
検定依頼件数も前年対比10.5%増加し、約131万件にものぼりました。

この数字から推察するに、世界中のスイス腕時計を求めるお客様の機械式腕時計の精度に対する要求が、次第に強くなっていったものと思われます。そしてクロノメーターを取得することで付加価値を高めているのでしょうか?証明書発行数の内訳は、メカ式が約124万件、クォーツが約5万6千件でありました。

メーカー別にクロノメーター証明書、取得上位3社には、ロレックス社、オメガ社、ブライトリング社が顔を並べています。

その3社の内で、ロレックス社が約72万件もの多くを占め、シェアは、55%にものぼります。ロレックス社の代表的なキャリバー、メンズ用Cal.3135、レディス用Cal.2235は、設計上、非常に優れている為に必然的にクロノメーター級の精度を獲得するのは簡単な事かもしれません。

推察するにロレックス社に1000人の時計技能者がいて年200日工場が稼働するとして、日産3,600個近くのクロノメーター腕時計を生産している事になります。これは、一人の時計技能者が一日3個のクロノメーター生産を担当している事になるでしょう。

組立調整作業は一部はオートメーション化され、各作業が専門職によって特化され効率よく生産されているに違いありません。常日頃からロレックスの腕時計をオーバーホールする時に、思う事があります。香箱車、二番、三番、四番、ガンギ車、等の輪列車の地板への組み込みが非常に容易で、弊店の時計修理通信講座の修了生の皆さんでも簡単に組立出来るほどの易しさであります。

それに比較してパテックやバセロン、ジャガールクルト、フィリップ・ピゲ社等のムーブメントの輪列車の地板への組立は、非常に難しく、繊細な作業と言えます。この事がロレックス社がブレゲヒゲを採用していると共に多くのクロノメーター級を生産する事を、容易くしている事の要因の一つと、思われます。

二位には、オメガ社が約26万件、三位にはブライトリング社が18万件のクロノメーター証明書を取得しています。オメガ社もブライトリング社も、内蔵しているムーブメントの90%以上はETA社のムーブメントを採用しています。その事を考えますれば、ETA社のムーブメントが如何に優秀な機械であるか、解っていただけるのではないか?と思います。

一部の精通しているかのごとく思われている時計マニアから、ETA社のムーブメントが軽んじられていますが、それは大いなる誤りと言っても間違いありません。ETA社のリーズナブルな汎用ムーブメントが大量に生産されているからこそ、世界中のスイス時計を愛する人々が手頃な価格でスイス腕時計を身につける事が出来るという喜びがあるのです。

オリス、エポス、ハミルトン、フォルティス等のスイス時計のムーブメントは皆ETA社のムーブメントを搭載しており、少し手を加えればどれも糸も容易くクロノメーター級の精度は出るのです。

またクォーツのクロノメーターの殆どをブライトリング社のクォーツ腕時計が占め約5万件以上の数に上っておりますが果たしてクォーツにクロノメーター証明書を取得する意味が有るのでしょうか?小生は少し疑問に思ってしまいます。