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2007年05月21日

●続時計の小話・第59話(ノモスのトゥールビヨン)

先日、スイスバーゼルフェアに出張して帰国された大沢商会グループ弊店担当M氏より、ノモス社の最新の情報を沢山、頂きました。(NOMOS 2007 BASEL MODEL→)

ノモス社は1906年に創業した歴史ある時計会社ですが、長い間冬眠状態を余儀なくされ、1992年にローランド・シュベルトナーによって復興された時計会社です。復興されてわずか15年の間に、ノモス社独自設計のトゥールビヨンを開発したというビッグニュースです。
(NOMOS FLYING tourbillon→)

トゥールビヨンとは、仏語で『渦巻き』という意味ですが、脱進機、調速機が回転する状態から名づけられたと思われます。トゥールビヨンは、天才的時計師 アブラハン・ルイ・ブレゲが発明した機構で、キャリッジ内に脱進機、及び調速機を納め、回転させる事によって、姿勢差による重力の影響を減少させるという仕組みです。

腕時計という限られたスペースの中に、この機構を組み入れる事は、時計会社の技術力が問われるものです。実際にトゥールビヨンを開発し発売している時計メーカーは、名門の有名時計メーカーが名を連ねています。

パテック・フィリップ、オーデマピゲ、ブランパン、ユリスナルダン、ジャガールクルト、ピアジェ、ブレゲ、等々があります。その超有名時計会社に復興後、僅か15年のノモス社が仲間入りを果たした、という事は快挙だと断言しても差し支えないと思います。

トゥールビヨンには、いろんな種類があります。ベアト・ハルディマンが開発したセンター・トゥールビヨン、ダブル・トゥールビヨン。ジャガールクルト社が発売しているキャリッジを球形にして複数の回転軸を
設定する事により、立体的な回転運動をする、3次元トゥールビヨンがあります。

その他にはブリッジを文字板でに固定しない、宙空に浮かぶ様に見えるキャリッジをフライング・トゥールビヨン。他には、一般的にはキャリッジは一分間に一回転するのが通常ですが、30秒でキャリッジが一回転する、より精度が出る高速トゥールビヨン等が存在します。どれも1千万から3千万以上する高額高級時計です。

トゥールビヨンを新たに開発したノモス社が、ETA社製Cal.7001のムーブメントから完全に脱却して全く自社製の手巻きムーブメントを開発した技術力にも驚かされました。
(NOMOS Manufacture→)

このムーブメントの写真をM氏から頂戴して見てみましたが、ドイツにあるランゲアンドゾーネ社のCal.L931.5のムーブメントを彷彿とさせる様な、素晴らしい仕上げになっています。シャトンビス、スワンネックを採用したムーブメントは限りない美しい光芒を放っています。

M氏の話によりますと、ノモス時計はヨーロッパで大人気を博し、受注残が2000本以上も貯まっているそうです。弊店でも、ノモス自動巻カレンダー(タンゴマット・ゼータ)が納期が大変遅れていて、ご注文頂いた方々に長い時間待っていただいている事に大変恐縮している次第です。

セイコー社にも東谷宗郎先生の設計によるセイコー社独自のトゥールビヨン・プロトタイプが既に出来上がっており、ぜひ、それを商品化して世の中に出して欲しい、という強い思いがあります。例え、採算ペースにのらなくてもセイコー社の名声を上げるために商品化するようセイコー・インスツル社にエールを送りたいです。