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2007年03月31日

●続時計の小話・第56話(時計修理技能検定について)

平成18年度の時計修理技能検定が終了し、3月14日に合格発表が行われました。

平成18年度は、全国15都道府県で実施され受験者総数は717名になり、30年ぶりに受験者総数が700人を突破したという事でした。平成15年度の受験者総数が407人、平成16年度の受験者総数が641人、平成17年度の受験者総数が698人と毎年、時計修理技能検定の受験者が増えていっております。

この増加する数字を見ただけでも、全国の時計店が販売オンリーでは無く、時計技術に対して前向きな姿勢になってきた証拠だと思います。修理技術を伴った販売でないと今後生き残っていけないという危惧を抱いたのではないかと思います。

自店で販売した時計を自店で修理調整するという事が、理想ではありますが、多くの日本の時計店はその努力を皆目しないで、メーカーや輸入元のオフィシャルサービスに任せきりであった事への反省がこの受験者数の増加につながってきたと思われます。

1960年代から70年代の頃のように時計店の店主がしっかりした時計技術を身につけ、時計に対しての高い見識を持っていた時代では、時計メーカーや時計輸入業者は単に利益に走る時計のみを創るのではなく、しっかりした機械の時計を作るよう努力したものでした。時計店の店主が高レベルの技能を持っていたからこそ日本の時計メーカーも発展したに違いないのです。

時計修理技能検定の受験者数が増えてきた事は喜ばしい限りですが、一つだけ残念な点があります。一級時計技能士試験、二級時計技能士試験、共に試験教材をクォーツのみにしている為に、機械式腕時計の修理技能を試す事が出来ないからです。

クォーツと機械式では根本的に修理作業に差異がある為に、今日の様に機械式腕時計が完全に復活してきた今、試験教材に機械式腕時計を採用する段階に来ているのではないか?と思います。

機械式腕時計を修理するには、設備、工具等にクォーツ修理とは違う器具を所有しなければならず、簡単には試験課題を変更するのは難しいかもしれません。また、メカ式に精通した試験官の養成も急務になってくるでしょう。技能検定委員の方々や全時連・技術部の有隅武正先生には、ぜひ、御一考をしていただきたい、と思います。

現時点での機械式腕時計の修理技能を客観的に計る試験と言えば、長野県の『信州・匠の時計修理士試験』と、岩手県の『いわて機械時計士技能評価試験』しかありません。

ここ何年にもわたり、時計修理技能検定試験は試験教材にクォーツのみを採用している為に、試験合格者には、敢えて、クォーツ一級時計修理技能士、またはクォーツ二級時計修理技能士と、名称を改めるべきではないか?と独断的に思ったりしています。

現行の試験制度の合格者の中においても、機械式時計の修理技能に対して優秀な方もおられるものと思いますが、客観的に見て、機械式修理技能を推量するのは難しい状態ではないか?と思います。是非今後は試験課題にクォーツだけにとどまらずに機械式腕時計も合わせて採用する事を勧めたいと思っております。

【執筆後記】
3月25日の能登半島地震では多くの方からお見舞いのお電話、メールを頂戴いたしまして厚く御礼を申します。幸いにも白山市はほとんど被害がありませんでした。

知人によると「ゴォー」と不気味な音がしたらしいです。
輪島市・門前地域では多くのご年輩の方々が被災され、心よりお見舞い申し上げます。