« 第101話(高級アンティーク懐中時計の修理依頼) | | 第103話(オメガ女性用メカ式腕時計について) »
« 第101話(高級アンティーク懐中時計の修理依頼) | | 第103話(オメガ女性用メカ式腕時計について) »
2007年01月21日

●第102話(高級アンティーク腕時計の修理依頼)

ベトナムのお馴染みのNさんから、1940年代に作られたK9金側ROLEX角形婦人用ドレス腕時計の修理依頼を受けました(昔はROLEXも婦人用の手巻きドレスウォッチを沢山作っておりました)。また、Nさんの知人のIさんから、同じく1940年~50年代のK10金側ティファニー角形婦人用ドレス腕時計の修理依頼を受けました。

ROLEXの方は18石でブレゲヒゲで、OH・調整のみで見事な精度が復活しました。
いつも思うのですが、アンティークROLEXは修理していて楽しいのですが、ティファニーの方は大変でした。ヒゲゼンマイが他の時計の物を代用してあり、1日に4時間以上も遅れるという代物でした。振動数が解らないために、ヒゲ合わせ作業は難解を極めました。一度短く切ってしまえば元の木阿弥です。実測しながら何回も少しずつ切りながらヒゲの長さを決定しました(厄介な歯車の歯数・カナ数で計算すれば振動数は解ることですが)。

ムーブメントはアメリカ・ベンラス社製でしたが、元々はETA社製でした(ベンラスがETAからムーブを仕入れて、少しアレンジしてティファニーに納入したものと推測致します)。50年前のROLEXとETA社製のムーブでは、技術力に歴然と大きな差があることが改めて再認識し解りました。

【修理雑感】
E社製ムーブメントCal、2893系(普及品Cal、2846と自動巻機構以外は殆ど同じ)を採用しているオメガ・シーマスター、IWCポルトフィーノ及びアクアタイマー、ユリスナルダン、ホイヤーの緩急針調整は本当に厄介です。時計が遅れるために緩急針をプラスの方に動かせば、ヒゲ棒アガキが大きくなり、かえって大幅に遅れてしまうという私から思えば欠陥?ではないかと思うほどです。緩急針を動かすたびにヒゲ棒アガキ調整をしなければならないという二重手間です。

クロノメーター規格に通っていても、ヒゲ棒両当たりアガキが大きく、姿勢差・短弧で歩度に影響を受けます。一般的に高級機種になればヒゲ棒アガキは極めて少ないのですが、E社製ムーブメントCal、2893系にはこの常識があてはまらない様な気がします。強い衝撃でヒゲ棒アガキが動いて変動するのも気になります。ハック機能の秒針規正レバーがよく外れるのも気になる点です。このムーブは改良すべき点がある気がいたしております。