« 第102話(高級アンティーク腕時計の修理依頼) | | 第104話 (ROLEX社の栄光の足跡) »
« 第102話(高級アンティーク腕時計の修理依頼) | | 第104話 (ROLEX社の栄光の足跡) »
2007年01月21日

●第103話(オメガ女性用メカ式腕時計について)

オメガ社は今から30年~35年程前には、幾多の女性用メカ式腕時計を発売いたしておりました。紛れもなく当時のオメガ社はいろんな意味で世界第一級の時計メーカーだったでしょう。多種多様なニーズに応えるために、いろんなデザインの女性用腕時計を作っていました(その中でもオメガ・婦人用コンステレーション自動巻腕時計は最高の地位を示しておりました)。

1937年、初めて女性用ムーブメントを開発して以来、40種以上に渡る女性用メカ式・ムーブを市場に送り続けておりました。特に有名な女性用キャリバーを読者の皆様にご紹介したいと思います。
・キャリバー620 丸形(外径18mm厚さ2,5mm)19800振動 17石
・キャリバー690 極小長方形(外径18、8mm×7mm厚さ3,75mm)21600振動 17石
・キャリバー640 小型丸形(外径12,4mm厚さ2,85mm)19800振動 17石
・キャリバー730 小型角(外径16,4mm×9mm厚さ3,2mm)21600振動 17石
・キャリバー700 超薄型・丸形(外径20,8mm厚さ1,76mm)18000振動 17石

上記のムーブは全て手巻き式で小型の婦人用にもかかわらず、1日の誤差が殆ど20秒以内に入る精度を維持しておりました(当時の国産の高級婦人用腕時計の精度は日差±30~40秒位でした)。

ムーブの地板には全て金メッキされていまして、現在の機械と比較しても何ら遜色無い美しいムーブメントでした(全ての面で昔の方が良かったかもしれませんが)。特にCal、700は女性用としては世界最高峰の美しくて精度の出る手巻きムーブメントの一つと言って差し支えないかもしれません。アンティーク市場でこのキャリバーの内蔵した女性用腕時計を見つけられるとしたら、迷わず買いでしょうか。この読者の中にも女性の人が沢山おられますので、一度アンティーク・ショップで捜されたら如何でしょう。きっと手に入れられたらその美しいムーブメントの魅力にはまってしまうと思います。

オメガの女性用の自動巻キャリバーでは、672、682の2機種がダントツで秀逸でしょう(機構メカニズムは男性用Cal561に非常に似ております。その小型化と言ってもイイかもしれません。IWCも当時はブレゲヒゲの見事な女性用自動巻腕時計(ムーブは丸型)を生産しておりました。IWCも当時の機械式は見事の一語に尽きる時計を生産していたのです。ロンジンもそうです)。

オメガ社はクロノメーターBO検定にも女性用が多数合格し、ROLEX社といつも数量で1位を争っておりました。女性用に関してクロノメーター検定合格数は、1963年頃はROLEX社が200個弱、オメガ社が40個弱でしたが、1969年には立場が逆転しROLEXが5500個、オメガ社が20000個にまで一気に増えました。いかにオメガ社が短期間に高精度の女性用腕時計を増産できたか。その事から優秀な技術者が多く養成出来た証でもあるでしょうし、この婦人用OMEGAムーブの優秀さを物語るものです。男性用と比較しても何ら見劣りすることのない精度を持っていました。

女性用クロノメーター合格品の平均日差は-3秒~+12秒でした。当時の女性の方でも、オメガの腕時計を所有する事は一つの夢であったに違い有りません。今のROLEXのような圧倒的な実力と人気がありました。ちなみにROLEX社はOMEGAに先立つこと1925年に婦人用クロノメーター腕時計を生産開始しております(ROLEXの社史を紐解くと何でも1番が多いのにはビックリします)。前回お話ししましたNさん御依頼のROLEX婦人用腕時計(約60年前)も、いとも簡単に高精度が復活しました。