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2007年01月22日

●続時計の小話・第7話(ノモス自動巻について)

昨年末から、ドイツ・グラスヒュッテに本社を構えるノモス社が、 新開発の自動巻ムーブメントを完成した、という噂を聞きました。 今春のバーゼルフェアで、その新開発の自動巻ムーブメントが お披露目されました。

『タンジェント・オートマチック(タンゴマチック)』と命名された ムーブメントは、ノモス社の新進気鋭の29才の時計師『ミルコ・ハイネ』氏が 開発した、エプシロンを搭載されています。 (現物はまだ見ていないのですが写真からはシンプルで美しい機械のようで 惚れ惚れします)

ムーブメントの直径は、34.65mm、厚さ4.3mm(ケース径38mm、ケース厚さ8,3mm) の見事な薄型自動巻に設計されています。 2006年春に、249,900円(販売予定価格)で、発売される予定です。 日付無しが125個、カレンダー付きが125個、計250個が既に製造を終え、 一年間の動作テストを終了して、一年後に再度オーバーホールをして 市場に流すという手間のかかる事をするという話を聞きました。 まさにドイツ人気質を如実に表していると思います。

この完璧なまでの拘りと合理主義は、同じドイツから生まれている ランゲ&ゾーネ社も一定期間のテスト試行をしてのち、 再度オーバーホールをしてユーザーに渡すという、 とても手間がかかる事を当たり前のようにしています。 徹底した完璧な合理主義の賜物では無いかと思います。

小生の兄が商社に勤務していたころ、フランス、イタリヤ、ドイツを 毎年訪問していたのですが、聞く所によるとドイツの街は、理路整然として 綺麗で、ゴミもほとんど落ちていなかったと、よく聞かされていました。 昔からドイツ製の工作機械や、飛行機、自動車は、優れたものが多いのですが、 それはドイツ人の妥協を許さない気質が、脈々と引き継がれていたからに 違いありません。

ノモス社はマニュファクチュールを目指して、地板等も自社生産に 切り替えました。 従来の普及品であったプゾーCal.7001が、高精度が保持されているのも、 スイス高級腕時計にしか採用されていない微細精度緩急針機構 (トリオビス・ファイン・アジャストメント)等を採用し、 ノモス社独自で高精度が出るように調整しているからです。 来春の発売がとても楽しみなりました。

一般的に『手巻き』のオーバーホールは簡単な様に、おもわれがちですが ノモス・タンジェント・デイトなどは、分解・組立・調整に 細心の注意を払わなければ大変な事になります。 先日もN市の方から、タンジェント・デイトのオーバーホールの依頼を 受けたのですが、その方は誤ってノモスを水の中につけてしまい、 機械の中に水が入り込み、慌てて近くの時計店に修理依頼をされた所、 輪列地板、テンプ受け地板等に傷を一杯つけられ、 弊店に修理・交換依頼が来ました。

スケルトンの場合、手巻きといえども細心の注意を払って修理作業に 取りくまなければ酷い目に遭う事の顕著な一例です。