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2007年01月22日

●続時計の小話・第6話(誤った使用方法)

時計職人は一度、仕事に取りかかると、3時間以上も椅子に座り続ける事が あります。 どうしても運動不足になりがちで、若い頃、太かったふくらはぎも次第に 細くなり、下半身が衰えていくと感じで25年程前から、兄、知人の薦めもあり、 ゴルフをしています。 (この年になってもカートに絶対乗らない主義なので知人から怪訝な顔を されて不思議がられています)

シチズンにおられた時計師・野元輝義先生は、かって時計専門誌に 時計師体操等を発案して、運動不足になりがちな職人に独特の 体操・気分転換方法を、薦めておられました。 最近、よく見かける光景なのですが、ゴルフの最中に機械式時計 (ロレックス、オメガ・シーマスター)を、腕にはめながらプレイを しておられる人を見かけます。

アイアンで地面を叩く衝撃は凄いものと思われ、テンプもその衝撃に 上下左右に激しく振動して吃驚しているに違いありません。 時折、急に止まった腕時計の修理を預かり、裏蓋を開けてみますと、 テンプのテンションバネが外れて、テンプの穴石、受石が機械の中に紛れ込んで、止まった原因を作っている場合があります。

また衝撃でブレゲ巻き上げヒゲの上部が変形しないとも限りません。 おそらく、こういう場合、この時計の所有者はゴルファーが多いものと思います。 テンプ、ガンギ車、4番車等に、たとえ耐震装置がついてあったとしても、 激しいスポーツやゴルフをする時は、必ず外して頂きたいものです。

プレイ後、風呂やサウナに入る場合がありますが、その時でも ロレックスのサブマリーナやシードゥエラーを 腕につけたまま、平気の人を見かけます。 小生はその時ばかりは、余計なお節介なのですが『いい時計ですので、 風呂とかサウナの時は外された方が良いと思います。』と、助言しています。 いくら、防水機能が高くても、サウナの高温で時計油が変質しないとも限らず、 また、風呂につける事により、水垢や、洗剤のカス、人の身体の脂が付着して、 ケースや、時計バンドを劣化させるやもしれません。

先日、わざわざ大阪より、ご夫婦で修理依頼の為にご来店頂いた、 Nさんのロレックス・サブマリーナ・ノンデイトをお預かりしました。 Nさんは、以前にも回転ベゼルが全く動かなくなり、 他店にて交換してもらった事がある、と言っておられましたが、 今回も回転ベゼルは全く動かない状態でした。

回転ベゼルを外してみると、ケースとベゼルの間に、脂、ゴミ、埃等が、 目一杯詰まっていて、ヘの字型のバネも錆びておりました。 おそらく、Nさんもお買い上げ店のアドバイスが無かったものと思われ、 風呂、シャワーに常時ロレックスを付けておられた為に、 脂、垢、埃等がベゼルのスキマから入り込んで、 動かなくなったものではないかと思います。

どんなに防水性能が高い時計と言えども、風呂、シャワー、サウナ、 の時は外す習慣をつけて欲しいと思います。