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2007年01月22日

●第299話(竜頭・巻真入れ)

ムーブメントをオーバーホール後、歩度検定器で精度調整し、文字板・針を取り付け後、ケースに機械を入れ込む時に注意しなければならない時があります。オシドリをピンで押して巻真・リューズを取り出し、ケージングする時、時折,ツツミ車がカンヌキから外れてしまう時が往々にあります。そうなればリューズを押しても引いても全く動かない状態になり、いつも針合わせの状態になってしまい、手巻きが出来ないようになってしまいます。

そうなってしまうと、面倒でもオシドリを押してリューズ・巻真を分離し、ケースからムーブメントを取り出し、文字板・針を再度外して日の裏押さえバネを外し、ツツミ車の段差の中にカンヌキを埋め込んで、再度組立しなければならないという二重手間が生まれます。カレンダー機構やパワーリザーブ、クロノグラフ機能が付いていない手巻きの場合は、一番車・二番車受けを外してツツミ車とカンヌキの組み合わせを修正出来るのですが、そうでない場合は、文字板から外していかなければならない為、大変な面倒な作業に成らざるを得ません。

それを防ぐ方法として、小鉄車をツツミ車が噛み合う針合わせ状態にし、オシドリを押してリューズを抜く方法があります。これとて最善の方法ではなく、時折、キチ車がムーブメントから外れてしまい、大変な目に遭う時もあります。(最低限、巻真にグリース油を満遍なく塗布してスムーズに入れられるようにしていれば避けられる場合もあります。ついうっかりオシドリを強く押してしまうと外れやすいのでオシドリを滑りやすくするために小物油を少々塗る時もあります。)

分解する時に、各々ムーブメントがどのような癖を持っているかあらかじめ知っておいたら作業は段取り良く進むと思います。分解するまでに、巻き真を何回と無く抜いたり入れたりして、ツツミ車とカンヌキの組み合わせはどのような方法が一番安全であるか知っておくべきだと思います。セイコー社は一般的に、ゼンマイが巻ける状態(キチ車とツツミ車が噛み合った時)でリューズ・巻真を抜いた方がツツミ車とカンヌキが外れにくいですし一方、シチズン社は針合わせの状態にしてリューズを抜いた方が良い場合が多いです。

最近ノモスの修理依頼が時折来るようになりました。ノモスが採用しているキャリバーETA7001は、針合わせの状態にして巻真を抜いた方がトラブルを避けられると思います。